6. 肝線維症を合併した常染色体劣性多発性嚢胞腎の2小児例に対する先行的腎移植の経験

【はじめに】常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)は多様な臓器合併症を伴い, 腎不全に陥る先天性疾患である. 近年の新生児医療・腎代替療法の進歩で, ARPKDの生命予後は改善し, さらに末期慢性腎不全に陥った際には腎移植も実施されるようになった. 今回, 肝線維症による門脈圧亢進症(門亢症)と脾機能亢進症を呈した末期腎不全2小児例に対して, 脾摘後, 後腹膜腔移植床確保のため右腎摘出して先行的腎移植(PRT)を実施したので報告する. 【症例】7歳と9歳の末期腎不全の女児. 汎血球減少を認め, 食道静脈瘤に対し内視鏡的結紮術を行っていた. 腹腔スペースが狭いため腹膜透析困難と判断しPRTを予定...

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Published in山口医学 Vol. 59; no. 3; p. 148
Main Authors 水谷誠, 梶保祐子, 古山政幸, 石塚喜世伸, 上田博章, 近本裕子, 秋岡祐子, 世川修, 淵之上昌平, 寺岡慧, 服部元史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 2010
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ISSN0513-1731

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Summary:【はじめに】常染色体劣性多発性嚢胞腎(ARPKD)は多様な臓器合併症を伴い, 腎不全に陥る先天性疾患である. 近年の新生児医療・腎代替療法の進歩で, ARPKDの生命予後は改善し, さらに末期慢性腎不全に陥った際には腎移植も実施されるようになった. 今回, 肝線維症による門脈圧亢進症(門亢症)と脾機能亢進症を呈した末期腎不全2小児例に対して, 脾摘後, 後腹膜腔移植床確保のため右腎摘出して先行的腎移植(PRT)を実施したので報告する. 【症例】7歳と9歳の末期腎不全の女児. 汎血球減少を認め, 食道静脈瘤に対し内視鏡的結紮術を行っていた. 腹腔スペースが狭いため腹膜透析困難と判断しPRTを予定. PRT半年前に食道静脈瘤に対し内視鏡的結紮術, 1ヵ月前に脾摘を行い汎血球減少症の改善後, 右腎摘出しPRTを行った. 術後血流動態変化による門亢症の増悪はなかった. 【考察】ARPKDは症例ごとに腎機能障害と肝合併症の病態・重症度が異なるため, 症例に応じた治療計画を立てる必要がある.
ISSN:0513-1731