NO.15 慢性疼痛時に併発するうつ様・情動異常行動の基礎的検討:神経栄養因子の関与

【目的】長引く難治性疼痛ではしばしば, いわゆる“Spiral Depression”に遭遇する. しかし知覚-情動神経系の変調は不明な点が多く治療に一定した見解がない. 最近, 神経栄養因子BDNFはCNS内で広く分布し神経機能障害に共通することが示唆されている. そこで, ラット慢性疼痛モデルを用い, うつ様, 情動性行動を観察し, またBDNF誘導剤(4-MC)が有効か調べた. 【方法】ITカテを埋め込んだラットに末梢神経損傷(CCI)を行った. 左右後肢への熱刺激に対する反応潜時の差(PWL)が大きい慢性状態で, 強制水泳(不動時間)とopen field test(情動行動)を観察し...

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Published in山口医学 Vol. 59; no. 3; p. 144
Main Authors 安田聖子, 蓑田誠治, 叶辰宜, 岸下裕輔, 津野晃正, 井田唯香, 福原佳世子, 石川敏三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 2010
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ISSN0513-1731

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Summary:【目的】長引く難治性疼痛ではしばしば, いわゆる“Spiral Depression”に遭遇する. しかし知覚-情動神経系の変調は不明な点が多く治療に一定した見解がない. 最近, 神経栄養因子BDNFはCNS内で広く分布し神経機能障害に共通することが示唆されている. そこで, ラット慢性疼痛モデルを用い, うつ様, 情動性行動を観察し, またBDNF誘導剤(4-MC)が有効か調べた. 【方法】ITカテを埋め込んだラットに末梢神経損傷(CCI)を行った. 左右後肢への熱刺激に対する反応潜時の差(PWL)が大きい慢性状態で, 強制水泳(不動時間)とopen field test(情動行動)を観察した. 4-MC投与による効果を調べ, また5HT受容体阻害薬による修飾を検討した. 【結果・結論】CCI後PWLの持続的低下において, 強制水泳での不動時間延長(うつ様)と, 運動活性増加, 快行動減少が認められた. 4-MC投与はこれらを軽減し, その作用は5HT阻害により拮抗された. 従って, 慢性疼痛には気分障害を併発する事が動物でも観察され, その機構に, 痛覚-情動系に分布するBDNF不足が関与することが示唆される.
ISSN:0513-1731