4. 遠隔期に高度ARを発症したFreestyle弁置換術後の1症例

症例は82歳女性. 74歳時に大動脈弁狭窄症(二尖弁)の診断にて他院にて大動脈弁置換術(Freestyle生体弁#23, subcoronary法)を施行された. その後のフォローでは, 中等度の大動脈弁閉鎖不全症を認めるも, NYHAIにて8年経過していたが, 突然の呼吸苦, 起座呼吸が出現, 急激に増悪し, 急性心不全の診断にて当院へ緊急入院となった. 胸部レントゲン写真にて著名な肺うっ血所見を認め, 心臓超音波検査にて左冠尖短縮による急性の人工弁不全による大動脈弁閉鎖不全増悪を認めた. 準緊急にブタ心膜生体弁(CEP#19)を用いて再弁置換術を行った. 術中所見では, 左冠尖全体が左心室...

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Published in山口医学 Vol. 58; no. 5; p. 219
Main Authors 木村聡, 谷口賢一郎, 上野安孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 山口大学医学会 2009
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ISSN0513-1731

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Summary:症例は82歳女性. 74歳時に大動脈弁狭窄症(二尖弁)の診断にて他院にて大動脈弁置換術(Freestyle生体弁#23, subcoronary法)を施行された. その後のフォローでは, 中等度の大動脈弁閉鎖不全症を認めるも, NYHAIにて8年経過していたが, 突然の呼吸苦, 起座呼吸が出現, 急激に増悪し, 急性心不全の診断にて当院へ緊急入院となった. 胸部レントゲン写真にて著名な肺うっ血所見を認め, 心臓超音波検査にて左冠尖短縮による急性の人工弁不全による大動脈弁閉鎖不全増悪を認めた. 準緊急にブタ心膜生体弁(CEP#19)を用いて再弁置換術を行った. 術中所見では, 左冠尖全体が左心室側へ高度に逸脱しており, これが大動脈弁閉鎖不全症の増悪の原因と考えられた. 術後の経過は良好で, 患者は良好な状態で軽快退院された. 一般にFreestyle生体弁の特徴として, 弁尖全体が滑らかに動き, 広い有効弁口面積が得られ, 石灰化しにくく, 耐久性にも優れることが知られており, 良好な長期成績が示されている. しかしながら, 一方で, 急性の人工弁不全により大動脈弁閉鎖不全症を発症する症例も報告されている. 今回, 我々はFreestyle生体弁による大動脈弁置換術後8年経過時に急性の人工弁不全を発症し, 再弁置換が必要となった症例を経験した. Freestyle生体弁の人工弁不全は急性に発症する傾向が指摘されており, フォローには注意を要すると考えられた.
ISSN:0513-1731