ラットにおける牛乳ミセル性リン酸カルシウム-ホスホスペプチド複合体の生体利用性 (p.311-323)

二種類の牛乳由来カルシウムの生体利用性を比較した. 一つは牛乳中の形態と同様の化学形態であるミセル性リン酸カルシウム-ホスホペプチド(MCP-PP)複合体で, もう一つは牛乳中の形態とは異なる市販の乳清カルシウムである. 実験1では, MCP-PP複合体または乳清カルシウムを唯一のカルシウム源とした飼料を成長期雌ラットに46日間投与した際に, カルシウム吸収, 骨密度, および骨強度を測定した. 実験2では, ラットにそれぞれの飼料をミールフィーディングした際の小腸内での可溶性カルシウム量を測定した. その結果, 両群とも見かけのカルシウム吸収率は経時的に減少したが, その経時変化は有意に異な...

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Published in日本栄養・食糧学会誌 Vol. 52; no. 4; p. 242
Main Authors 鳥羽保宏, 加藤健, 高田幸宏, 田中都, 中野智木, 青木孝良, 青江誠一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本栄養・食糧学会 1999
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Summary:二種類の牛乳由来カルシウムの生体利用性を比較した. 一つは牛乳中の形態と同様の化学形態であるミセル性リン酸カルシウム-ホスホペプチド(MCP-PP)複合体で, もう一つは牛乳中の形態とは異なる市販の乳清カルシウムである. 実験1では, MCP-PP複合体または乳清カルシウムを唯一のカルシウム源とした飼料を成長期雌ラットに46日間投与した際に, カルシウム吸収, 骨密度, および骨強度を測定した. 実験2では, ラットにそれぞれの飼料をミールフィーディングした際の小腸内での可溶性カルシウム量を測定した. その結果, 両群とも見かけのカルシウム吸収率は経時的に減少したが, その経時変化は有意に異なっていた. すなわち, 乳清カルシウム群に比べ, MCP-PP群では, 変化のパターンが緩やかであった. また, 乳清カルシウム群に比べ, MCP-PP群では, 大腿骨骨密度も有意に高い値を示した. 大腿骨骨強度(破断応力と破断エネルギー)も, 乳清カルシウム群に比べ, MCP-PP群で有意に高い値を示した. さらに, MCP-PP飼料を投与した2時間半後の小腸内容物中の可溶性カルシウムの量は, 乳清カルシウム飼料での量の約3倍と高かった. これらの結果から, MCP-PP複合体のカルシウム生体利用性は, 乳清カルシウムよりも高いことが示され, さらにこの利用性の違いは小腸内での可溶性の差が一因していると考えられた.
ISSN:0287-3516