O-8-2 大動脈遮断困難症例における体外循環方法の検討

【はじめに】 複数回手術による癒着や上行大動脈の石灰化など大動脈遮断が危険で困難な場合, 大動脈遮断を行わずに体外循環を施行する必要がある. 当院で大動脈遮断が困難と予想される場合の体外循環と心筋保護について報告する. 【対象および方法】 2008年4月から2010年12月に大動脈遮断が危険または困難と診断された4症例を対象にした. 各々の症例に応じて送脱血部位を選択し, 体外循環を確立した. 心停止にはKCLを静脈血貯血槽(VR)内に急速投与し, 循環血液の血清カリウム濃度を上昇させて行い, 心停止を得た後で心内修復術を施行した. 心停止の維持には平均137.5±57.4mEq/LのKCLの...

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Published in体外循環技術 Vol. 38; no. 3; p. 407
Main Authors 松本年史, 清水良, 谷口慎吾, 半田仁美, 加藤裕希, 川南聡, 朝井裕一, 菊池洋一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 2011
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Summary:【はじめに】 複数回手術による癒着や上行大動脈の石灰化など大動脈遮断が危険で困難な場合, 大動脈遮断を行わずに体外循環を施行する必要がある. 当院で大動脈遮断が困難と予想される場合の体外循環と心筋保護について報告する. 【対象および方法】 2008年4月から2010年12月に大動脈遮断が危険または困難と診断された4症例を対象にした. 各々の症例に応じて送脱血部位を選択し, 体外循環を確立した. 心停止にはKCLを静脈血貯血槽(VR)内に急速投与し, 循環血液の血清カリウム濃度を上昇させて行い, 心停止を得た後で心内修復術を施行した. 心停止の維持には平均137.5±57.4mEq/LのKCLの投与が必要であり, 心停止中の平均血清カリウム濃度は11.4±3.9mEq/Lであった. 人工心肺離脱前にヘモコンセントレーターと高効率血液浄化膜使用し, 大量の置換液を用いたDUF (High volume DUF)を施行することで, 急速に血清カリウム濃度を正常化させて体外循環を離脱した. 離脱時の平均血清カリウム濃度は5.15±0.1mEq/Lであり, 電解質の正常化に要した平均時間は49.5±5.4minであった. また, 平均体外循環時間は126.3±29minで, 平均最低直腸温は27.9±2.5℃であった. 【考察】 大動脈遮断を行わずに心内修復術を施行するため, 心停止状態を得るには10mEq/L程度の血清カリウム濃度が必要であり, 心停止の維持にも大量のKCLを必要とする. 心停止状態で良好な術視野を得ることが可能で, 体温や灌流量を調節することで更に手術操作が容易となる. また, 血清カリウム濃度の正常化にはHigh volume DUFを用いた血液浄化を行うことで, 急速に正常化することが可能であった. 【結論】 大動脈遮断が極めて危険な症例において大動脈遮断を回避し, 大量のKCL投与で安全に手術を行うことができた.
ISSN:0912-2664