指定-3. 体外循環条件による大動脈手術後覚醒遅延患者の検討

【目的】 大動脈手術後に覚醒遅延を生じた症例に対して, その原因究明のため, 体外循環条件を分類し検討した. 【対象】 2007年4月から2008年3月までの1年間で, 左心バイパスまたは人工心肺下に大動脈手術を施行した症例から, 治療上意図的に覚醒を延長した患者を除外した207例を対象とし, retrospectiveに検討した. 内訳は, 男女比141:66, 年齢(才)は68±12, 左心バイパスと人工心肺比は93:114であった. 【方法】 手術翌朝AM 6:00に鎮静剤投与中止, AM 9:00の時点で従命に応じないもの, あるいはかろうじて従命には応じるが自発呼吸が8回/min未満...

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Published in体外循環技術 Vol. 37; no. 3; pp. 376 - 377
Main Authors 長澤洋一, 浜松貴浩, 遠藤久美子, 岡野隆浩, 八馬豊, 今野智佳, 佐藤麻美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 2010
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Summary:【目的】 大動脈手術後に覚醒遅延を生じた症例に対して, その原因究明のため, 体外循環条件を分類し検討した. 【対象】 2007年4月から2008年3月までの1年間で, 左心バイパスまたは人工心肺下に大動脈手術を施行した症例から, 治療上意図的に覚醒を延長した患者を除外した207例を対象とし, retrospectiveに検討した. 内訳は, 男女比141:66, 年齢(才)は68±12, 左心バイパスと人工心肺比は93:114であった. 【方法】 手術翌朝AM 6:00に鎮静剤投与中止, AM 9:00の時点で従命に応じないもの, あるいはかろうじて従命には応じるが自発呼吸が8回/min未満で人工呼吸器の換気モードをCPAPに変更できなかったものを覚醒遅延と定義した. 検討は覚醒遅延群と正常覚醒群に分類し, 循環方法, 手術時間, 年齢, 体外循環時間を比較検討した. また, 左心バイパス症例を除いた人工心肺症例を手術時間, 年齢, 体外循環時間, 循環停止時間などで比較検討した. 【結果】 覚醒遅延症例数は207例中13例(6%)で全例が人工心肺症例であった. 覚醒遅延群と正常覚醒群の比較では手術時間(min) 414±92:346±90 (p<0.05), 年齢(才) 75±5:67±12 (p<0.05), 体外循環時間(min) 257±53:157±82 (n.s.)であった. 人工心肺症例だけを検討した覚醒遅延群と正常覚醒群の比較では, 手術時間(min) 414±92:375±79 (n.s.), 年齢(才) 75±5:69±11 (n.s.), 体外循環時間(min) 257±53:223±54 (p<0.05), 循環停止時間(min) 73±33:69±23 (n.s.)であった. 【考察】 人工心肺と左心バイパス症例を比較検討した結果, 有意に人工心肺症例の方が覚醒遅延を起こしていた. これは心停止, 脳灌流, 低体温, 手術部位などの条件が大きく異なるためだと考える. そのため, 左心バイパス症例を除いた人工心肺症例のみを検討したが, 脳合併症の原因として危惧される循環停止時間や脳灌流法に有意差は無かった. 【結論】 大動脈手術後の覚醒遅延症例を検討した. 人工心肺症例では体外循環時間に有意差を認めたが, 循環停止時間や脳灌流法に有意差は無かった.
ISSN:0912-2664