24. 弓部大動脈瘤手術における脳酸素飽和度の有用性

【目的】 弓部大動脈瘤手術における選択的脳灌流法(SCP)について, 近赤外線分光法(NIRS)を指標とした有用性を検討した. 【対象】 2007年4月から2010年3月までに低体温法, SCPを併用し弓部大動脈人工血管置換術を施行した開心術症例20例を対象とした. 全例にNIRSによる脳酸素飽和度(TOI)を測定, 体外循環における灌流指標とした. 【方法】 体外循環は上下大静脈落差脱血, 送血部位は術前検査などにより選択, メインポンプに遠心ポンプを使用した. 直腸温25℃で循環停止とし, SCPを腕頭および左総頸動脈に行った. 末梢側吻合後下半身の循環を人工血管側枝より再開し, 分枝再建...

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Published in体外循環技術 Vol. 37; no. 3; pp. 369 - 370
Main Authors 佐藤賢行, 渋谷良平, 太田助十郎, 千田佳史, 関啓二, 山本文雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 2010
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Summary:【目的】 弓部大動脈瘤手術における選択的脳灌流法(SCP)について, 近赤外線分光法(NIRS)を指標とした有用性を検討した. 【対象】 2007年4月から2010年3月までに低体温法, SCPを併用し弓部大動脈人工血管置換術を施行した開心術症例20例を対象とした. 全例にNIRSによる脳酸素飽和度(TOI)を測定, 体外循環における灌流指標とした. 【方法】 体外循環は上下大静脈落差脱血, 送血部位は術前検査などにより選択, メインポンプに遠心ポンプを使用した. 直腸温25℃で循環停止とし, SCPを腕頭および左総頸動脈に行った. 末梢側吻合後下半身の循環を人工血管側枝より再開し, 分枝再建後順に脳灌流を終了した. 中枢側吻合後, 大動脈遮断を解除し直腸温34℃で体外循環を終了した. なお, SCPは腕頭動脈, 左総頸動脈の2分枝へ400~600mL/minでローラーポンプ送血した. 脳灌流の指標としてNIRSによるパラメータを検討した. 【結果】 体外循環時間145±21分, 大動脈遮断時間108±19分, 循環停止時間6.0±2分, 選択的脳灌流時間61±9分, 最低直腸温23.7±0.8℃であった. TOIは循環停止により急激に低下し, SCP開始により改善した. SCP中, TOIは主に脳灌流量に左右され, 灌流圧や血液希釈による変化はわずかであった. なお, TOIの低下から1例に送血部位の変更を行い, 更に, 4例に脳灌流量を増量することで良好な結果を得た. 【考察】 NIRSから得られるTOIは迅速に変化量を表示し, 体外循環中の脳灌流の指標として有用かつ重要と考えられた. しかしNIRSは, 前額部のみの測定であり, また, 血液希釈の影響, 絶対値表示ができないなどの問題点を考慮する必要がある. 【結論】 弓部大動脈瘤手術などSCP時の脳灌流の指標として, 非侵襲的に測定可能なNIRSを用い良好な結果を得ている. TOIは脳灌流の一指標として有用であった.
ISSN:0912-2664