O-18-3 体外循環を用いた内頸動脈内膜剥離術の一例

【はじめに】 高度頸動脈狭窄に対する治療法として頸動脈内膜剥離術(CEA)が広く行われている. 通常CEAはシャントチューブを挿入するために, 頸動脈の一時遮断を要する. 対側内頸動脈閉塞などがあり側副血行が乏しい症例では虚血に対する耐性が極めて低く, 短時間の遮断でも脳梗塞を生じる危険性がある. 体外循環を用いることにより, 脳血流を遮断することなくCEAを施行した症例を経験したため報告する. 【症例】 80歳, 女性, 身長138cm, 体重31.4kg, BSA 1.11m2右内頸動脈完全閉塞を合併した左内頸動脈狭窄症(95%狭窄). 【方法】 XEMEX社製心筋保護ポンプKIC-02の...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in体外循環技術 Vol. 37; no. 3; p. 329
Main Authors 石田絢也, 新谷好正, 馬渕正二, 深田譲治, 田宮幸彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 2010
Online AccessGet full text
ISSN0912-2664

Cover

More Information
Summary:【はじめに】 高度頸動脈狭窄に対する治療法として頸動脈内膜剥離術(CEA)が広く行われている. 通常CEAはシャントチューブを挿入するために, 頸動脈の一時遮断を要する. 対側内頸動脈閉塞などがあり側副血行が乏しい症例では虚血に対する耐性が極めて低く, 短時間の遮断でも脳梗塞を生じる危険性がある. 体外循環を用いることにより, 脳血流を遮断することなくCEAを施行した症例を経験したため報告する. 【症例】 80歳, 女性, 身長138cm, 体重31.4kg, BSA 1.11m2右内頸動脈完全閉塞を合併した左内頸動脈狭窄症(95%狭窄). 【方法】 XEMEX社製心筋保護ポンプKIC-02のローラーポンプ1基を使用した閉鎖回路とし, 回路構成はヘパリンコーティング6mmチューブ180cm×2, バブルフィルターはHBT-C1-B(MERA), フィルター上部より圧ラインを分岐させ回路内圧を測定した. 送血は4Fr 7cmシース, 脱血は10Fr FEM2カニューレとし, プライミングは重炭酸リンゲル液を使用した. 左大腿動脈を露出しヘパリン投与後脱血カニューレを挿入, 回路内を血液で充満させた. 次に送血用シースをセルジンガー法で左内頸動脈の狭窄の遠位部に挿入し, 体外循環を開始した. 回路内圧は150~200mmHgを目安とした. 【結果】 130~150mL/minの流量で, INVOS計測値は麻酔導入前より高値を維持できた. 内膜剥離術が終了した時点で体外循環を停止した. 総灌流時間62分. 術中の脳虚血合併症は認められなかった. 【考察】 術中の体血圧変動が懸念されるような症例においても, ローラーポンプを用いた体外循環により安定した脳血流を確保できた. また, 回路構成を工夫することにより, 内部の気泡の除去や終了時の返血も可能であった. INVOSは必要な送血量の参考となると考えられた. 【結語】 術中脳虚血のリスクが非常に高い内頸動脈狭窄症例に対し, 体外循環を用いて安全にCEAを施行することができた. 今後も症例数を重ね, 更に安全なシステムを構築していきたい.
ISSN:0912-2664