O-14-8 左心補助人工心臓流量が患者に及ぼす影響

【目的】 当院において2010年3月, 特発性拡張型心筋症と診断された5歳男児(身長108cm, 体重15.2kg, BSA 0.68m2)にTOYOBO型成人用左心補助人工心臓(LVAS)を装着した. 術後20日目にはPI約4.3L/min/m2を得られるようになった. しかし, それに伴い平均血圧および肝機能関連検査値の上昇, また, 覚醒不良の遷延, 自発呼吸パターン不良による人工呼吸器離脱困難などを認めていた. そのため, それら症状改善の糸口を模索した. 【方法】 覚醒不良の遷延に対する策として, 米国Katherine Lietzらの報告を受けPI約4.3L/min/m2まで増大し...

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Published in体外循環技術 Vol. 37; no. 3; p. 313
Main Authors 清水裕也, 松浦健, 平山雄樹, 庄内千紘, 中畑仁志, 星直樹, 中澤寿人, 會田広和, 菊地昭二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 2010
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Summary:【目的】 当院において2010年3月, 特発性拡張型心筋症と診断された5歳男児(身長108cm, 体重15.2kg, BSA 0.68m2)にTOYOBO型成人用左心補助人工心臓(LVAS)を装着した. 術後20日目にはPI約4.3L/min/m2を得られるようになった. しかし, それに伴い平均血圧および肝機能関連検査値の上昇, また, 覚醒不良の遷延, 自発呼吸パターン不良による人工呼吸器離脱困難などを認めていた. そのため, それら症状改善の糸口を模索した. 【方法】 覚醒不良の遷延に対する策として, 米国Katherine Lietzらの報告を受けPI約4.3L/min/m2まで増大していたLVAS流量をPI 3.0L/min/m2ほどまで減少させた. 鎮静レベルの評価にはRSSおよびRASSを用いた. 【結果】 術後20日目でLVAS流量はピークを示し人工呼吸器離脱へ向け鎮静を浅くするが, RSS 4~5, RASS -4~-3と覚醒不良. 術後30日目にLVAS流量を減少させると翌日より鎮静レベルに変化が表れ, RSS 1~4, RASS -3~+1と明らかな改善が見られた. 人工呼吸器はON-OFF療法の後, 術後39日目で離脱. また, 同時に平均血圧は降下し持続投与が必要であった塩酸ニカルジピンも離脱. 術後から上昇を続けていた肝機能関連検査値も降下. 【結論】 Katherine Lietzらの成人を対象とした研究において, LVASによる過灌流は神経学的障害を引き起こす可能性があるとしているが, 今回我々の経験では小児においても同様の所見が疑われた. 肝機能関連検査値の上昇は, 循環血液量を負荷しLVAS流量が増大したことにより相対的に右心不全様の症状(うっ血肝)が増強したと考える. 今回, 患者に及ぼす影響としてLVAS流量をむやみに増大させるよりも最低限の流量を維持し, 右心機能とのバランスも重視することにより良い結果をもたらすことが示唆された.
ISSN:0912-2664