9. 人工心肺装置操作が作業負担に及ぼす影響についての基礎的検討

【目的】人工心肺装置の操作は患者生命を左右する業務であり, 操作者に生じる精神的な作業負担は極めて高いものと考えられる. 今回, 人工心肺装置の模擬操作が精神的作業負担に及ぼす影響を検討するため「フリッカー値」と「心拍変動」, 独自に作成した「作業負担評価尺度」を用いて評価を行った. 【被験者】臨床工学科3年に在籍する学生(全40名)のうち, 人工心肺装置の模擬操作を複数回体験している10名を対象とした. 男女比は9:1であった. 【方法】開放型人工心肺回路を模擬した実験装置を用いた. 人工心肺装置の操作は, 開始から終了までをイベント(開始, 遮断, 維持, 脱血不良, 解除, 離脱, 終了...

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Published in体外循環技術 Vol. 36; no. 4; p. 447
Main Authors 工藤剛実, 佐々木典子, 高橋るみ, 宇川雅晴, 小出芳夫, 畠山公一, 小林峰徳, 増岡佳宏, 相澤康弘, 佐藤美津枝, 鈴木一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 2009
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Summary:【目的】人工心肺装置の操作は患者生命を左右する業務であり, 操作者に生じる精神的な作業負担は極めて高いものと考えられる. 今回, 人工心肺装置の模擬操作が精神的作業負担に及ぼす影響を検討するため「フリッカー値」と「心拍変動」, 独自に作成した「作業負担評価尺度」を用いて評価を行った. 【被験者】臨床工学科3年に在籍する学生(全40名)のうち, 人工心肺装置の模擬操作を複数回体験している10名を対象とした. 男女比は9:1であった. 【方法】開放型人工心肺回路を模擬した実験装置を用いた. 人工心肺装置の操作は, 開始から終了までをイベント(開始, 遮断, 維持, 脱血不良, 解除, 離脱, 終了)ごとに7つのブロックに区分し, 各イベントは3分とし連続して操作してもらった. ブリッカー値については操作直前と, 操作終了直後に測定を行った. 心拍変動については, 操作開始3分前から終了3分後まで連続的に測定した. 作業負担評価尺度については, 操作終了後に記入を求めた. 【結果】フリッカー値については, 操作直前値より操作終了直後値が有意に低下していた. 心拍変動より精神的作業負担の生理的指標であるLF/HFを求め解析を行ったが, 有意な変化を抽出することはできなかった. 作業負担評価尺度については, 脱血不良イベントと複数のブロック間にて有意な差を抽出された. 【考察】フリッカー値は精神疲労評価に用いられており, 本研究の結果は, 人工心肺装置の操作によって精神疲労が増加することが示唆された. また, 作業負担評価尺度は主観的作業負担であり, 脱血不良イベントという非常時に精神的作業負担が高まっていた. 心拍変動は精神的作業負担の生理的指標であるが, 有意な差を抽出することはできなかった. 今後, 測定法や解析法について再考していきたい. 【結論】人工心肺装置操作の模擬体験によって精神的作業負担が増加していることが示唆された.
ISSN:0912-2664