8. 腫瘍による気道閉塞に対してECMOを施行した1症例

【目的】腫瘍による気道閉塞に対して, ECMOを施行し, 救命し得た症例を経験したので報告する. 【症例】39歳, 男性. 胸痛, 呼吸苦を主訴に入院. 呼吸状態が悪化し, 人工呼吸器を装着しても酸素化の改善が見られなかった. その為, 気管支鏡にて右主気管支が腫瘍と血塊で閉塞を確認し, 呼吸状態の改善を目的にECMOを施行した. 【回路構成】補助循環装置はテルモ社製エマセブ, 送・脱血カニューレにはテルモ社製経皮挿入用カニューレ16.5Fr・19.5Frを使用した. 【経過】開始前, 循環動態が不安定なため, 左大腿動脈に送血カニューレ, 右大腿静脈に脱血カニューレを挿入し, 送血流量3L/...

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Published in体外循環技術 Vol. 36; no. 2; pp. 180 - 181
Main Authors 舟久保洋行, 山下一好, 山下忠邦, 村上秀崇, 栗原真由美, 杉原英司, 丹木義和, 畑谷重人, 木村雅一, 谷内仁, 永田拓也, 長尾垣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 2009
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Summary:【目的】腫瘍による気道閉塞に対して, ECMOを施行し, 救命し得た症例を経験したので報告する. 【症例】39歳, 男性. 胸痛, 呼吸苦を主訴に入院. 呼吸状態が悪化し, 人工呼吸器を装着しても酸素化の改善が見られなかった. その為, 気管支鏡にて右主気管支が腫瘍と血塊で閉塞を確認し, 呼吸状態の改善を目的にECMOを施行した. 【回路構成】補助循環装置はテルモ社製エマセブ, 送・脱血カニューレにはテルモ社製経皮挿入用カニューレ16.5Fr・19.5Frを使用した. 【経過】開始前, 循環動態が不安定なため, 左大腿動脈に送血カニューレ, 右大腿静脈に脱血カニューレを挿入し, 送血流量3L/min, 酸素流量3L/min, 酸素濃度100%, V-AバイパスにてPCPSを開始した. 開始後も酸素化は改善せず, 送血流量, 酸素流量の設定に苦慮した. そのため, 内頸静脈に送血カニューレを挿入し, V-Vバイパスに変更した. その後, 酸素化は改善し, 気管支鏡にて右主気管支気管壁より血塊を摘出した. 摘出後, 換気が良好となり酸素化も改善したため, 離脱を試みた. しかし腫瘍からの出血が持続し, 再度血塊による気道閉塞を起こしたため, ECMOを継続した. 開始から2日目, 腫瘍にエタノール注入したが止血困難の為, 気管支動脈塞栓術を施行した. 止血後, 気道閉塞は認めず, 4日目にECMOを離脱した. 離脱後14日目に退院となった. 【考察】開始時は循環動態が不安定であったため, V-Aバイパスを施行した. 循環動態は改善したが, 右主気管支は腫瘍と血塊にて閉塞していたため, 呼吸状態の改善は得られなかった. そこでV-AバイパスからV-Vバイパスに切り替え, 肺血流に高濃度の酸素を供給し, 全身の酸素化が改善したと推測した. 【結語】気道閉塞により酸素化を維持できなくなった状態に対し, V-AバイパスからV-Vバイパスに切り替えたことで酸素化が改善した症例を経験した. 患者の状態を考慮し, 適切な手段を選択することが重要であると考えられた.
ISSN:0912-2664