1. 小児PCPSにおいて左心室心尖部脱血と右心房脱血を併用し救命した1例

【はじめに】小児劇症型心筋炎に対する経皮的心肺補助(以下PCPS)に対し, 右心房脱血・大腿動脈送血のV-AバイパスによるPCPSに左心室心尖部脱血を追加することで, 良好な結果を得た症例を経験したので報告する. 【症例】7歳, 女性. 身長106cm, 体重18.9kg体表面積0.74m2. 既往歴には, 甲状腺機能低下症, 低身長症. 劇症型心筋炎により当院小児科入院. その後, 更なる状態悪化の為, ICUにてPCPS導入となる. 【経過】PCPSは, テルモ社製エマセブ(熱交換器付き小児用)を使用. 送脱血は, 右心房脱血, 大腿動脈送血にて行った. 脱血状態不良による流量不足から全身...

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Published in体外循環技術 Vol. 35; no. 3; pp. 350 - 351
Main Authors 宮本綾子, 岩岡健, 村上智章, 小柳俊哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 2008
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Summary:【はじめに】小児劇症型心筋炎に対する経皮的心肺補助(以下PCPS)に対し, 右心房脱血・大腿動脈送血のV-AバイパスによるPCPSに左心室心尖部脱血を追加することで, 良好な結果を得た症例を経験したので報告する. 【症例】7歳, 女性. 身長106cm, 体重18.9kg体表面積0.74m2. 既往歴には, 甲状腺機能低下症, 低身長症. 劇症型心筋炎により当院小児科入院. その後, 更なる状態悪化の為, ICUにてPCPS導入となる. 【経過】PCPSは, テルモ社製エマセブ(熱交換器付き小児用)を使用. 送脱血は, 右心房脱血, 大腿動脈送血にて行った. 脱血状態不良による流量不足から全身状態悪化. 左心室負荷軽減も十分でないことから, 人工心臓(VAS)も検討されたが, 適応体重に大幅に満たない為, 断念した. そこで, 左心室負荷軽減と脱血量の十分な確保を目的として, 左心室心尖部と右心房の2箇所による脱血と上行大動脈送血に切り替え, 良好な体循環を維持することが可能となった. これをきっかけに全身状態も劇的に改善, 良好な左心室負荷軽減効果も得ることが出来た. その後, 心機能も回復し, 左心室心尖部脱血を抜去. V-AバイパスにてPCPSを維持し, 離脱することができた. 【考察】小児におけるPCPSは流量確保が困難であり, 全身状態の維持が容易ではない. 左心室心尖部脱血と右心房脱血を併用したことによる効果は, 流量の確保のみならず, 左心室の直接的な負荷軽減に繋がったと考えられる. 左心室心尖部脱血のみも考えられるが, 右心房脱血を併用することにより心室でのサッキングのリスクを軽減し, より安全な循環補助の確立が行えたと考えられた. 【結語】小児劇症型心筋炎に対して, 左心室心尖部脱血と右心房脱血を併用したPCPSは有効であった.
ISSN:0912-2664