R2-2 人工心肺の抗凝固薬としてアルガトロバンを用いた一例

【目的】アルガトロバン(以下Ar)のみを抗凝固薬として用いた人工心肺症例を経験したので報告する. 【症例】ヘパリン起因性血小板減少症疑いの67歳女性. 46.4kg. 三弁疾患にてAVR+MVR+TAP施行. 慢性腎不全にて術中透析施行. 術前の透析および心カテでの抗凝固薬はそれぞれ, メシル酸ナファモスタット(NM), Arを使用した. 【仕様・方法】当院通常仕様の人工心肺システム(回路のみヘパリンコーティング)に加え, 単体のカルディオトミーリザーバを追加し, 凝集や血栓によるフィルタ目詰まりを想定し, 交換できるよう備えた. 体外循環中はACT400秒以上を目標に, Ar投与量は, 開始...

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Published in体外循環技術 Vol. 35; no. 3; p. 286
Main Authors 吉田譲, 角田卓哉, 松本貴澄, 徳永満, 渥美杜季子, 小塚アユ子, 塚本功, 森田高志, 関口敦, 上部一彦, 新浪博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術医学会 2008
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ISSN0912-2664

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Summary:【目的】アルガトロバン(以下Ar)のみを抗凝固薬として用いた人工心肺症例を経験したので報告する. 【症例】ヘパリン起因性血小板減少症疑いの67歳女性. 46.4kg. 三弁疾患にてAVR+MVR+TAP施行. 慢性腎不全にて術中透析施行. 術前の透析および心カテでの抗凝固薬はそれぞれ, メシル酸ナファモスタット(NM), Arを使用した. 【仕様・方法】当院通常仕様の人工心肺システム(回路のみヘパリンコーティング)に加え, 単体のカルディオトミーリザーバを追加し, 凝集や血栓によるフィルタ目詰まりを想定し, 交換できるよう備えた. 体外循環中はACT400秒以上を目標に, Ar投与量は, 開始前:13.5mg(0.3mg/kg), 回路内:2mg, 循環中:16.5mg/hr(6γ/kg/min)とし, 追加カルディオトミーリザーバと静脈リザーバ(脱血ポート)に半量ずつ持続投与した. 15~30分毎にACTを測定し, 適宜追加増量する方針とした. 圧ライン生食およびセルセーバ生食にも, 相当量のArを混入した. 【経過】入室時ACT133秒. 開始前Ar投与にてACT317秒のため, 5mg追加投与を2回するも326秒にしかならず, 10mg追加投与して人工心肺開始した. 体外循環中はACTを指標に追加投与および持続投与を増量(最大50mg/hr)し, 350~420秒に調整した. 体外循環時間207分. Ar総量140mg. セルセーバリザーバ内に血餅は認めたものの, 人工肺・リザーバ・回路には肉眼的に血栓は認めなかった. 離脱後8時間を経過してもACTは300秒以上で, 術後出血傾向継続し, 再開胸止血術中に透析を2時間施行し, ACTは221秒に短縮した. 【考察・結語】体外循環中ACT400秒以上を目標にして投与増量を継続した結果, 大量投与となり出血傾向を助長した可能性が示唆された. 追加投与によりACTが比例的に延長しない場合には, 目標ACTを短く設定したり(例えば350秒以上), NMなど別の抗凝固薬の使用も検討する必要があると思われた. また, 経時的低下はあるものの, 術後透析がArの排泄に功奏した可能性が示唆された. 今後, 症例を重ねて検討したい.
ISSN:0912-2664