30 体外循環用軟質塩化ビニルチューブからのDEHPとTOTMの溶出の比較検討

【目的】体外循環に用いられる軟質塩化ビニルチューブには, 可塑剤としてdi(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)が使用されてきた. 1990年代に入り, 内分泌撹乱物質に関心が高まり, 近年DEHPに替わる可塑剤としてtri(2-ethylhexyl)trimellitate(TOTM)を使用したものが市場に提供され始めた. 今回, TOTM濃度の測定する方法を確立し, 軟質塩化ビニルチューブからのDEHPとTOTMの溶出量を比較検討したので報告する. 【対象】人工心肺血液回路用に製造された内径5/16インチ(8mm)軟質塩化ビニルチューブで, (A)DEHP可塑剤を含有す...

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Published in体外循環技術 Vol. 32; no. 3; p. 333
Main Authors 目比谷信, 渡邉浩次, 井平勝, 石川隆志, 山内章弘, 海江田章, 豊崎正人, 三澤健治, 榊原未和, 石川正敏, 杉森美幸, 山本賢, 石田沙織, 服部良信, 伊藤康宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本体外循環技術研究会 2005
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Summary:【目的】体外循環に用いられる軟質塩化ビニルチューブには, 可塑剤としてdi(2-ethylhexyl)phthalate(DEHP)が使用されてきた. 1990年代に入り, 内分泌撹乱物質に関心が高まり, 近年DEHPに替わる可塑剤としてtri(2-ethylhexyl)trimellitate(TOTM)を使用したものが市場に提供され始めた. 今回, TOTM濃度の測定する方法を確立し, 軟質塩化ビニルチューブからのDEHPとTOTMの溶出量を比較検討したので報告する. 【対象】人工心肺血液回路用に製造された内径5/16インチ(8mm)軟質塩化ビニルチューブで, (A)DEHP可塑剤を含有する塩化ビニルチューブ2種類, (B)TOTM可塑剤を含有する塩化ビニルチューブ4種類を対象とした. 【方法】各チューブ2本にそれぞれ5mLの牛血清を封入し, 37℃下に置き, 2時間および6時間後に血清をガラス試験管に移してDEHPとTOTM測定まで-20℃に保存した. DEHP濃度およびTOTM濃度は, K. Kambiaらが報告した方法を改変してHPLCにて測定した. 【結果】(A)では, 6時間後の血清中DEHP濃度が, 2時間後の約2倍まで上昇した. (B)では, 6時間後の血清中TOTM濃度が, 2時間後の約1.3倍まで上昇した. また, (B)からDEHPは検出されなかった. (A)の2時間後および6時間後のDEHP溶出量は, (B)のTOTM溶出量の, それぞれ約100倍, 約200倍であった. 【考察および結論】可塑剤の溶出量の増加は, 接触面積, 時間と温度に比例するといわれる. この研究では, 時間経過による変化について検討した. TOTMは単位時間当たりの増加率が, DEHPに比べ緩やかで, 溶出量もDEHP溶出量に比べ極めて少なく, 可塑剤の生体被曝を軽減する一方法と考える.
ISSN:0912-2664