67. 特異な音声パタンを示した表出性言語障害児の指導経験:構音習得により有意味語が増加した1例
[はじめに] 表出性言語障害児で鼻咽腔構音が顕著な症例に対し構音訓練を行ったところ, 急速に構音を習得し発語の増加も認められた. しかし, 音声言語習得過程をみると評価や方針の再検討が必要と考えられた. [症例] 6歳7ヵ月男児. 1歳半健診でことばの遅れを指摘され経過観察. 保育所担任より「発音の仕方が気になる」と指摘され, 4歳6ヵ月時に当科受診した. [初診時評価] WPPSI知能検査は動作性検査のみ施行PIQ84. ITPAは音声表出を要しない6項目施行SS平均34.2. 表出面は有意味語「ママ」のみで, 単語の一部の音の口型と思われる動きが認められたが, [ma]以外の単音節はすべて...
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Published in | 聴能言語学研究 Vol. 19; no. 3; p. 214 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本聴能言語学会
2002
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ISSN | 0912-8204 |
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Summary: | [はじめに] 表出性言語障害児で鼻咽腔構音が顕著な症例に対し構音訓練を行ったところ, 急速に構音を習得し発語の増加も認められた. しかし, 音声言語習得過程をみると評価や方針の再検討が必要と考えられた. [症例] 6歳7ヵ月男児. 1歳半健診でことばの遅れを指摘され経過観察. 保育所担任より「発音の仕方が気になる」と指摘され, 4歳6ヵ月時に当科受診した. [初診時評価] WPPSI知能検査は動作性検査のみ施行PIQ84. ITPAは音声表出を要しない6項目施行SS平均34.2. 表出面は有意味語「ママ」のみで, 単語の一部の音の口型と思われる動きが認められたが, [ma]以外の単音節はすべて「ン」に近い音であり鼻咽腔構音と考えられた. コミュニケーションには指差しや身ぶりを使用. 口腔周辺運動は年齢レベル可能発語器官の器質的異常なく, 鼻咽腔閉鎖機能は良好. 本症例は表出性言語障害児と考えられたが鼻咽腔構音が顕著に認められ, 構音誘導が有効と考え構音訓練を試行した. [訓練経過] 口腔から呼気を出す要領を習得すると[p]は容易に可能となり, その後母音を習得. [m, b, h, n, t]は構音点や方法を示すのみで可能となり, 日常の使用も容易であった. [∫, s, r]は6歳頃に自然習得した. 発語は[p]と母音習得後, 習得した音を組み合わせ「パン」「あお」の単語が出現. その後発語意欲も高まり単語数は増加した. 5歳時には2-3語文発話がみられ, 6歳頃には構音は会話レベルでほぼ正常となった. [考察とまとめ] 本例の音声言語習得過程より(1)[p]習得後短期間で子音を習得したことから, 呼気操作の問題が大きかったと考えられた. (2)[p]と母音習得後は発語の増加が認められたこと, 有意味語出現後まもないことから言語発達や構音面の変化を経過観察することが必要であったのではないかと思われた. 以上より, 適切な訓練時期や内容など方針の設定には, 発語の状況や構音の変化などの情報収集と言語発達や構音発達の総合的な評価が必要であったと考えられた. |
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ISSN: | 0912-8204 |