53. 難聴児のインテグレーション:通常学級で生き生きと過ごすための支援
人間は人とのかかわりの中で大きく成長していくものである. 聴覚障害教育に携わって以来, 豊かな人格の形成を目指すとともに, コミュニケーション能力を高め, 人とかかわることの楽しさを感じてほしいと願ってきた. 難聴学級の指導支援で, 聴覚学習や言語学習などの直接的支援が大切なことは論ずるまでもない. しかし, 週2回程度通級してくる難聴児が生活の大半を通常学級で過ごしていることを考えれば, 自立活動を中心とした直接的支援だけでは不十分である. そこで, 難聴学級の役割として重要になってくるのが, 保護者への援助, 通常学級およびその学校との連携などの間接的支援である. 特に, 通常学級との連携...
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Published in | 聴能言語学研究 Vol. 18; no. 3; p. 214 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本聴能言語学会
2001
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0912-8204 |
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Summary: | 人間は人とのかかわりの中で大きく成長していくものである. 聴覚障害教育に携わって以来, 豊かな人格の形成を目指すとともに, コミュニケーション能力を高め, 人とかかわることの楽しさを感じてほしいと願ってきた. 難聴学級の指導支援で, 聴覚学習や言語学習などの直接的支援が大切なことは論ずるまでもない. しかし, 週2回程度通級してくる難聴児が生活の大半を通常学級で過ごしていることを考えれば, 自立活動を中心とした直接的支援だけでは不十分である. そこで, 難聴学級の役割として重要になってくるのが, 保護者への援助, 通常学級およびその学校との連携などの間接的支援である. 特に, 通常学級との連携では, 学級担任と連絡を密に取り合うことはもちろんのこと, 担任説明会の中で実際に難聴学級を参観してもらい, 難聴についての説明をしている. また, 学期に1回程度学級訪問を行い, 難聴児とともに創り出した難聴理解授業を行っている. 難聴理解授業は, 難聴学級の担当者が中心となって専門的な立場から理解啓発していく段階から, 難聴学級で学習したことを難聴児自身が中心となって通常学級の健常児に働きかけていく段階にまで発展させていくことがより効果的である. 補聴器体験やロールプレイング等の実践を行うごとに, 難聴児の表情が明るくなり, 学級の中で緊張することなく安心感に包まれて過ごせるようになっていくのを感じている. 健常児の難聴に対する理解が深まるにつれ, どの学級でも「耳が聞こえても聞こえにくくても, みんな同じだよ」という声を聞くことができ, 常に感動の連続である. また, 難聴児のことをわかってほしいという思いから, 難聴理解のための絵本『ハートはなにいろ』を作成した. この絵本が活用され, 難聴についての理解が深まっていくことは, うれしいことである. 今後も難聴児が生活しやすい環境を求めて支援し続けたい. |
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ISSN: | 0912-8204 |