特集にあたって
テクノロジーの急激な進歩により評価法指導法代替機器等の開発等言語障害関連領域においても膨大な量の技術や情報があり, また, インフォームドコンセントなど専門職と利用者の関係の変化の時代を迎え, あらためて専門領域の確立, 専門家養成のカリキュラムや臨床体制等についての検討等が必要になっている. 十分な情報提供の上で本人に主体的に選び採ってもらう時代に, 私達は十分な情報をもっているか, 当事者を丸抱えしていないか(訓練や指導者への依存をさせていないか), 結果としての社会復帰の遅れはないか, 必要最小限の介入とはなにか, 他の専門職や社会資源を十分に利用できるようにしているか等を考えるとき介入...
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Published in | 聴能言語学研究 Vol. 14; no. 3; p. 198 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本聴能言語学会
1997
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ISSN | 0912-8204 |
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Summary: | テクノロジーの急激な進歩により評価法指導法代替機器等の開発等言語障害関連領域においても膨大な量の技術や情報があり, また, インフォームドコンセントなど専門職と利用者の関係の変化の時代を迎え, あらためて専門領域の確立, 専門家養成のカリキュラムや臨床体制等についての検討等が必要になっている. 十分な情報提供の上で本人に主体的に選び採ってもらう時代に, 私達は十分な情報をもっているか, 当事者を丸抱えしていないか(訓練や指導者への依存をさせていないか), 結果としての社会復帰の遅れはないか, 必要最小限の介入とはなにか, 他の専門職や社会資源を十分に利用できるようにしているか等を考えるとき介入する際の目的と当事者との合意による現実的ゴールの設定ということが重要になってくる. 必要最小限の介入とは, 全体像を見据えて最も合理的に行われるべきものである. 見通しをもって, 余分な介入を避けること, 今行おうとする介入の全体の中での位置づけを知ること, 今優先させるべきことは何かを検討すること等が必要である. また当事者との合意によるゴールの設定を行うには, 当事者の主体的取り組みを重んじ当事者からの訴えに対応すること, 当事者が自身で問題解決のプログラムを作れるよう十分な情報提供をすることなどが必要と考えられる. これらを言語臨床のなかで実現していくのだが, ことはそれほど簡単ではない. 言語臨床といってもその内容は, 言語機能の改善訓練, コミュニケーション指導, 言語障害者(児)の生活(発達心理等における)支援等さまざまに考えられる. よって立つ場(病院や福祉センターなど)の機能によりSTとして期待されているものが違い, 障害の違い(中途障害や先天障害など)によりライフステージにおける問題の起こり方も違うので, 臨床の内容も違ってくる. 当然, その終了目標も機能の改善, 問題の解消, 本人が独り立ちするまでの心の伴奏(走)者等さまざまな形をとる. 現在臨床に携わっている人々がどのような枠組みの中で臨床をとらえているのか, ことにその終了時期についてどのように考えているのか興味深いところである. 今回障害領域別に6人の方々をシンポジストとして, おのおののとらえる言語臨床と終了時期について報告して頂いた. 石田宏代先生には, ことばの遅れを主訴とした就学までの発達障害児を中心に, 子どもとの信頼理解の関係を指導する言語臨床とその終了時期について述べて頂いた. 小澤恵美先生には, 幅広い年齢の吃音者に対し, 病院という場で行っている言語臨床と先生の目指す積極的肯定的な終了時期について報告して頂いた. 糟谷政代先生には, 胎生期からの器質的障害である口蓋裂について, 口蓋裂チームによる生まれてから学童成年期に至るまでの言語管理体制と, その終了時期について述べて頂いた. 高橋ヒロ子先生には, 乳幼児期からの障害である脳性麻癖について, 当人にとっては言語機能障害や発達学習の問題, 親にとっては子育てや介助の問題等の多様さを通して言語臨床と終了時期について述べて頂いた. 種村純先生には, 原因疾患, 年齢ともに幅広い失語症者への言語訓練と長期的経過観察の分析を通して, 言語訓練の終了時期に関連した機能改善の到達点の予測について述べて頂いた. 手束邦洋先生には, 脳損傷により重度の失語症や運動性構音障害となった方々への言語臨床を通して, 障害を対象喪失ととらえる先生の言語臨床の考えから, 言語臨床とその終了時期について述べて頂いた. 以上これら長年の臨床経験に基づいた報告が, これから臨床を続けていく人にも, 新たに臨床をはじめる人にも, 終了時期も含めた言語臨床についての枠組み(構え)を考えるきっかけになれば幸いである. |
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ISSN: | 0912-8204 |