D-2. 失語症者における呼称障害と意味的・音韻的障害の関係:呼称課題と復唱課題の成績比較

【目的】失語症者の呼称障害において意味障害と音韻障害の関連を想定し, 認知神経心理学的モデルに基づくSALA失語症検査を用いて, 呼称課題と音韻出力処理課題として考えられる復唱課題の関連性を検討する. 【方法】協力者:失語症者38名を対象とした. 軽度18名, 中等度20名で, 平均年齢は60歳であった. 材料:SALA失語症検査から, 聴覚的異同弁別, 呼称, 単語の復唱, 無意味語の復唱の4課題を行った. 復唱課題はモーラ数が変数になっており, 2, 3, 5, 6モーラ語を使用した. さらに, 今回新たに単音節有意味語の復唱課題を作成し施行した. 手続き:聴覚的異同弁別の課題はスクリーニ...

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Published inコミュニケーション障害学 Vol. 24; no. 3; p. 214
Main Authors 香川麻耶, 長塚紀子, 平井沢子, 進藤美津子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本コミュニケーション障害学会 2007
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ISSN1347-8451

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Summary:【目的】失語症者の呼称障害において意味障害と音韻障害の関連を想定し, 認知神経心理学的モデルに基づくSALA失語症検査を用いて, 呼称課題と音韻出力処理課題として考えられる復唱課題の関連性を検討する. 【方法】協力者:失語症者38名を対象とした. 軽度18名, 中等度20名で, 平均年齢は60歳であった. 材料:SALA失語症検査から, 聴覚的異同弁別, 呼称, 単語の復唱, 無意味語の復唱の4課題を行った. 復唱課題はモーラ数が変数になっており, 2, 3, 5, 6モーラ語を使用した. さらに, 今回新たに単音節有意味語の復唱課題を作成し施行した. 手続き:聴覚的異同弁別の課題はスクリーニングテストとして行った. それぞれの課題の教示や中止基準などはSALA失語症検査に従った. 【結果】38名の呼称課題の正答率は, 61%であった. 単音節の復唱は92%, 無意味語の復唱60%, 有意味語の復唱89%の正答率だった. 呼称成績と復唱課題それぞれの成績の相関について検定を行った結果, 呼称成績と有意味語の復唱成績に有意な正の相関がみられた. 無意味語の復唱における「モーラ効果あり群」と「なし群」の呼称成績を比較したが, 有意な差はみられなかった. 【考察】有意味語の復唱課題の成績と呼称成績に有意な正の相関がみられたことは, 聴覚的音韻分析が適切に機能していることを前提に, 認知神経心理学的モデルから予想される結果であった, 無意味語の復唱では, 聴覚的把持力の関与は無視できないが, モーラ効果ありと判断された群(音韻出力配列に支障があると推測される群)でも呼称が比較的良好なケースがあったのは, 音韻出力レキシコンから音韻出力配列へのアクセスが適切に働くことで, 呼称成績の低下が緩和された可能性が考えられる.
ISSN:1347-8451