D-1. 呼称における失語症者の自己修正行動

【はじめに】失語症者の呼称課題における自己修正行動を, 目標語のモーラ数・親密度, 目標語への音素的類似性, 聴覚的理解力との関係, から検討した. 【方法】失語症者33名を対象に, SALへ失語症検査から, PR20呼称I(親密度)・PR24呼称II(モーラ数). AC1聴覚的異同弁別(2モーラ無意味語)・AC4名詞の聴覚的理解, を抜粋して実施した. 自己修正行動生起率は, 誤り反応数を分母, 自己修正行動生起数を分子として, 自己修正行動成功率は, 自己修正行動生起数を分母, 自己修正行動成功数を分子として計算した. 目標語を表出しているにもかかわらず言い直した場合は「正解を修正した数」...

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Published inコミュニケーション障害学 Vol. 24; no. 3; p. 214
Main Authors 真崎美穂, 長塚紀子, 山澤秀子, 進藤美津子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本コミュニケーション障害学会 2007
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ISSN1347-8451

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Summary:【はじめに】失語症者の呼称課題における自己修正行動を, 目標語のモーラ数・親密度, 目標語への音素的類似性, 聴覚的理解力との関係, から検討した. 【方法】失語症者33名を対象に, SALへ失語症検査から, PR20呼称I(親密度)・PR24呼称II(モーラ数). AC1聴覚的異同弁別(2モーラ無意味語)・AC4名詞の聴覚的理解, を抜粋して実施した. 自己修正行動生起率は, 誤り反応数を分母, 自己修正行動生起数を分子として, 自己修正行動成功率は, 自己修正行動生起数を分母, 自己修正行動成功数を分子として計算した. 目標語を表出しているにもかかわらず言い直した場合は「正解を修正した数」として別に集計した. 音素類似性は, Gandour et a1. (1994), Lee et al. (2000)での方法を日本語用に修正した指標を用い, 修正前の表出と修正後の表出における音素類似性指標を計算した. 【結果と考察】以下のことが示唆された. (1)自己修正行動成功率は親密度効果がみられたが, モーラ数によって左右されない. (2)自己修正行動が成功するかどうかにかかわらず, 修正行動後は修正行動前よりも目標語に音素的に近づく. 高親密度語のほうが低親密度語よりも自己修正行動で目標語に音素的に近づく. ブローカ失語症者・伝導失語症者はウェルニッケ失語症者よりも, 修正行動後目標語に音素的に近づく. 自己修正行動が成功しない場合, ブローカ失語症者はウェルニッケ失語症者よりも目標語に音素的に近づく. (3)呼称課題の成績と自己修正行動の生起率・成功率には関連がある. (4)正解を修正する行動と聴覚的理解力の関連は薄い. 正解を修正した数は伝導失語群に多かったが, 注意力の問題が考えられる. (5)聴覚的理解力は自己修正行動成功に関連している可能性があるが, 自己修正行動生起とはあまり関連しない. 自己修正行動は, 聴覚的理解力だけでなく, 内的な音韻表象, 注意力, 触覚・固有知覚・内的フィードバック過程や心理的拒否も含むさまざまな面を考慮にいれて捉える必要がある.
ISSN:1347-8451