A-8-1. 先天性感音難聴児の人工内耳装用後療育効果について
【はじめに】人工内耳が先天性の難聴児にも普及して, 音声言語による自然なコミュニケーションカや言語力の獲得などに効果が大きく, 多くの難聴児が人工内耳手術を受けるようになった. その中には軽度発達障害を合併した難聴児も含まれている. 当教室でも1997年以来, 在籍中に手術を受けた聴覚障害児は38名になり, その療育効果について検討することにした. 【目的】先天性感音難聴児の人工内耳装用後の療育効果について検討することを目的とする. 【方法】対象は当教室在籍中に人工内耳の装用手術を受けて, すでに就学した先天性感音難聴児26名で, 術前の良耳平均聴力レベルは87.5~128.8dBHL, 手術...
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Published in | コミュニケーション障害学 Vol. 23; no. 3; p. 228 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本コミュニケーション障害学会
2006
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ISSN | 1347-8451 |
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Summary: | 【はじめに】人工内耳が先天性の難聴児にも普及して, 音声言語による自然なコミュニケーションカや言語力の獲得などに効果が大きく, 多くの難聴児が人工内耳手術を受けるようになった. その中には軽度発達障害を合併した難聴児も含まれている. 当教室でも1997年以来, 在籍中に手術を受けた聴覚障害児は38名になり, その療育効果について検討することにした. 【目的】先天性感音難聴児の人工内耳装用後の療育効果について検討することを目的とする. 【方法】対象は当教室在籍中に人工内耳の装用手術を受けて, すでに就学した先天性感音難聴児26名で, 術前の良耳平均聴力レベルは87.5~128.8dBHL, 手術年齢2歳11ヵ月~6歳0ヵ月, 術後療育期間9ヵ月~3年7ヵ月であった. このうち8例に学習障害, ADHD傾向, PDD傾向などの他障害が合併していた. 術前の療育に引き続いて, 術後聴覚の活用による言語獲得を促進する療育を行い, 就学前に人工内耳装用下音場閾値, 音場での67式単語の聴き取り検査, WPPSI知能検査, 構音の状態を分析した. 【結果】人工内耳装用下音場閾値はA群とB群で有意差はなかった. 67式単語の聴き取り検査は, A群が平均74%, B群が平均40%で統計的有意差があった. WPPSI知能検査のPIQの成績はA群が平均111.4, B群が平均97.4で有意差があった. VIQの成績はA群が平均84.8, B群が平均53.3で有意差があった. 【考察】他障害がない群は, 聴き取り成績, VIQ, 構音の獲得が良好で, 人工内耳装用後の療育効果があったといえる. 徹底的に聴覚を活用した総合的療育プログラムが有効であったためと思われた. 一方, 他障害を合併した群では, 他障害がない群と比べてそれらの成績が低く, 人工内耳装用後の療育効果が十分であるとはいえなかった. 今後療育効果が得にくい事例への療育方法の検討と, より早期に人工内耳を装用した事例の療育効果について検討する必要があると思われた. |
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ISSN: | 1347-8451 |