A-6-3. 失語症者の言語性保続と言語処理過程との関連

【目的】言語性保続は失語症のどのタイプにも認められ, 失語症患者の言語性コミュニケーションを大きく阻害する因子といわれている. 本研究は, 「SALA失語症検査」(藤林ら, 2004)を利用して, 言語性保続と言語処理過程との関連を検討する. 【方法】対象は, 失語症者32名(男性23名, 女性9名)で平均年齢は59歳であった. SALA失語症検査の聴覚的異同弁別課題, 単語の復唱2課題, 無意味語の復唱, 呼称課題を施行した. 保続反応の分析は, 呼称課題の反応のみを対象とし, 表出名詞総数を分母として保続出現率を求めた. 【結果】失語症者32名中, 保続が出現したのは12名(流暢型8名,...

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Published inコミュニケーション障害学 Vol. 23; no. 3; p. 224
Main Authors 吉松純子, 長塚紀子, 荻野恵, 進藤美津子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本コミュニケーション障害学会 2006
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ISSN1347-8451

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Summary:【目的】言語性保続は失語症のどのタイプにも認められ, 失語症患者の言語性コミュニケーションを大きく阻害する因子といわれている. 本研究は, 「SALA失語症検査」(藤林ら, 2004)を利用して, 言語性保続と言語処理過程との関連を検討する. 【方法】対象は, 失語症者32名(男性23名, 女性9名)で平均年齢は59歳であった. SALA失語症検査の聴覚的異同弁別課題, 単語の復唱2課題, 無意味語の復唱, 呼称課題を施行した. 保続反応の分析は, 呼称課題の反応のみを対象とし, 表出名詞総数を分母として保続出現率を求めた. 【結果】失語症者32名中, 保続が出現したのは12名(流暢型8名, 非流暢型4名)であった. すべてのSALAの課題で, 保続症例群は保続無群の成績を下回っていた. 特に呼称課題と無意味語の復唱では, 保続症例群の成績低下が目立った. しかしながら, 保続出現率とそれぞれの復唱課題成績との相関は有意ではなかった. 保続の特徴を, 目標語との比較で, 音韻的類似, 意味的類似, 無関連語, 新造語に分類した. 保続反応がすべて無関連語という特異的な2症例を除くと, 音韻的類似が最も多く52%であった. 呼称課題において, 誤反応か無反応の場合に語頭音のヒントを出したが, ヒントを出すことにより, さらに保続反応を引き起こした. 【考察】呼称課題において, 失語症者の4割近くに保続反応がみられた. 保続症例群に無意味語の復唱が苦手な傾向があり, 認知神経心理学モデルの音韻入出力変換の不具合が間接的に関与している可能性が考えられた. 一方, 有意味語の復唱が良好なことから, 意味システムや音韻レキシコンが比較的良好に機能していても保続は出現することが示唆された. また, 目的語と音韻的に類似した語への保続が多いことや, 語頭音ヒントが保続を誘発している現象から, 保続出現は, 呼称における言語処理過程の中で意味処理より音韻処理により関連があることがうかがわれた.
ISSN:1347-8451