A-1-4. ディサースリアにおける「できる発話」と「している発話」の関連性

【目的】近年, 国内におけるディサースリアの臨床技術は飛躍的に進展しつつあるが, これにともない言語訓練室の中でのいわば「できる発話」と生活の場における「している発話」との間に乖離が生じる事例をしばしば経験するようになった. 「できる発話」から「している発話」へと般化させるための方策が今後検討, 体系化されるには, まず両者の実態を把握する必要がある. そこで今回ディサースリアのある発話者における, 両者の関連性を明らかにすることを目的として検討したので報告する. 【方法】ディサースリアのある人97例(男性60例, 女性37例)を対象として, (1)発話明瞭度(9段階評価尺度)について言語聴覚...

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Published inコミュニケーション障害学 Vol. 23; no. 3; p. 216
Main Authors 志村栄二, 西尾正輝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本コミュニケーション障害学会 2006
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ISSN1347-8451

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Summary:【目的】近年, 国内におけるディサースリアの臨床技術は飛躍的に進展しつつあるが, これにともない言語訓練室の中でのいわば「できる発話」と生活の場における「している発話」との間に乖離が生じる事例をしばしば経験するようになった. 「できる発話」から「している発話」へと般化させるための方策が今後検討, 体系化されるには, まず両者の実態を把握する必要がある. そこで今回ディサースリアのある発話者における, 両者の関連性を明らかにすることを目的として検討したので報告する. 【方法】ディサースリアのある人97例(男性60例, 女性37例)を対象として, (1)発話明瞭度(9段階評価尺度)について言語聴覚士による他覚的評価と発話者自身による自覚的評価, (2)実施した訓練の種類, (3)認知機能(MMSE), (4)言語訓練に対する意欲(5段階評価尺度), (5)満足度(3段階評価尺度)を調査した. 【結果と考察】主に以下の結果を得た. (1)タイプ, 訓練内容, 明瞭度のレベルにかかわりなく, 言語訓練室内と比較して日常生活状況では明瞭度が低下した. (2)弛緩性, 痙性, 失調性, UUMNディサースリアでは, 言語訓練室内と比較して日常生活状況では明瞭度が低下することを自覚していた. (3)総じて, 「できる発話」と「している発話」の双方において, 発話者はある程度客観的に明瞭度の程度をとらえていた. (4)「できる発話」と「している発話」との間に認められた明瞭度の差とMMSE, 言語訓練に対する意欲, 満足度, 年齢, 訓練開始後経過月数との間にいずれも相関は認められず, 性差もなかった. 以上の結果は, ディサースリアの言語治療では「できる発話」から「している発話」へと般化させる必要性を示唆するものであり, 個人の生活に即した実用的なコミュニケーション場面を設定し社会的スキルとしてのコミュニケーション能力を獲得させることの重要性を示唆するものと考えられた.
ISSN:1347-8451