P-43)多発骨折を契機に発見された被虐待児症候群の1例
目的:全身多発骨折で見つかり, 早期に児童相談所の介入をしえた被虐待児症候群の乳児例を経験したので文献的考察を含めて報告する. 対象および方法:4カ月の男児. 入院1カ月前に両頬, 左鎖骨, 左脛骨, 臀部などの出血斑を主訴に母に連れられ当科外来を受診. その後右上腕の腫脹のため再診し, エックス線撮影により右上腕骨に骨折を認めたため入院となった. 結果:入院後全身骨エックス線撮影を行ったところ, 多発性の骨折痕(新旧計6カ所)を認めた. 被虐待児症候群が疑われたが, 症例経験時には, 院内に虐待対策委員会が設置されておらず, 医局内ならびに看護部との検討ののち直ちに児童相談所に通告した. 児...
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Published in | 日本医科大学医学会雑誌 Vol. 7; no. 4; p. 218 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本医科大学医学会
2011
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ISSN | 1349-8975 |
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Summary: | 目的:全身多発骨折で見つかり, 早期に児童相談所の介入をしえた被虐待児症候群の乳児例を経験したので文献的考察を含めて報告する. 対象および方法:4カ月の男児. 入院1カ月前に両頬, 左鎖骨, 左脛骨, 臀部などの出血斑を主訴に母に連れられ当科外来を受診. その後右上腕の腫脹のため再診し, エックス線撮影により右上腕骨に骨折を認めたため入院となった. 結果:入院後全身骨エックス線撮影を行ったところ, 多発性の骨折痕(新旧計6カ所)を認めた. 被虐待児症候群が疑われたが, 症例経験時には, 院内に虐待対策委員会が設置されておらず, 医局内ならびに看護部との検討ののち直ちに児童相談所に通告した. 児童相談所・保健所職員との3回にわたる話し合いを行い患児を保護することが望ましいとの結論を得て, 退院当日児童相談所職員により初めて両親への説明が行われた. まず, 主治医から両親に出血傾向を示すような血液疾患や骨系統疾患などについて検査を行い, それらの疾患の可能性は否定的であること, 原因不明の多発性骨折のため児童相談所に通告していることを説明した. 続いて, 児童相談所職員から, 虐待の可能性があり, 患児の退院後の安全を図るために家族から一時的に隔離するという説明があり, 家族の同意のもと, 乳児院で保護することとなった. 考察:虐待対策委員会や児童相談所などとの連携を密にとり, 児童の安全確保やその後の家族の心理的サポートを行うことが肝要であると考える. |
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ISSN: | 1349-8975 |