奨学賞受賞記念講演(3)RNA干渉分子による急性・慢性肝炎,肝硬変症治療薬創薬
今回栄えある日本医科大学医学会奨学賞を受賞でき光栄であります. 研究課題は, 「RNA干渉分子による急性, 慢性肝炎, 肝硬変症治療薬創薬」であります. 厚生科学研究班の報告におきまして, 肝硬変患者は全国に約20万人おり, その内肝不全による死亡者数は年間約1万人で, 肝硬変を母体とし発症する肝癌と合わせると年間4万人強の患者が死亡しております. この数字は肺がん, 胃がんに次ぐものとなっております. 現在有効な治療法は肝移植のみですが, ドナーの数が圧倒的に不足しておりますのも周知の事実であります. われわれは, 以前よりこの病態に対しさまざまな治療法に取り組み, その成績を発表してきまし...
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Published in | 日本医科大学医学会雑誌 Vol. 2; no. 4; p. 238 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本医科大学医学会
2006
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ISSN | 1349-8975 |
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Summary: | 今回栄えある日本医科大学医学会奨学賞を受賞でき光栄であります. 研究課題は, 「RNA干渉分子による急性, 慢性肝炎, 肝硬変症治療薬創薬」であります. 厚生科学研究班の報告におきまして, 肝硬変患者は全国に約20万人おり, その内肝不全による死亡者数は年間約1万人で, 肝硬変を母体とし発症する肝癌と合わせると年間4万人強の患者が死亡しております. この数字は肺がん, 胃がんに次ぐものとなっております. 現在有効な治療法は肝移植のみですが, ドナーの数が圧倒的に不足しておりますのも周知の事実であります. われわれは, 以前よりこの病態に対しさまざまな治療法に取り組み, その成績を発表してきました. しかし門脈圧亢進症の根本的な解決にはその背景にある肝硬変症の進行を抑制, 治癒させねばならないことも明らかであります. この研究の特色, 独創的な点は, 機能ゲノム科学的手法を駆使して, 世界に先駆けてmiRNAの網羅的解析とvirusのゲノムへの組み込みを解析することで肝癌といったいまだ予後不良な疾患を特徴付ける点にあります. この研究は, (1)従来行われてきたmRNA, Proteinを中心とした病態研究におけるkey target(p53, Rb)などと同様な性質のmiRNAを探索できる可能性が高く, (2)それによって得られる結果は, これまでの概念を覆す病態解明や診断, 治療への応用が可能な基盤研究となると考えられる, (3)miRNAのcloningによる網羅的解析には高額な費用と時間が必要であるが, われわれの取得した効率的miRNA cloning方法によりコストエフェクティブなcloningが可能である, (4)ヒト生体よりのmiRNA cloningには多くの組織量が必要でbiopsyなどでは十分な遂行が不可能であり, 外科手術標本を用いることではじめて可能となる. |
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ISSN: | 1349-8975 |