P-8)分娩後にはじめて頸部筋腫でなく子宮体筋腫と判明し,筋腫核出術(子宮温存)が可能になった1例

子宮筋腫核出術では, 妊孕性の維持を目的に筋腫のみを核出し子宮は温存する. 頸部筋腫に対する手術では, 核出術施行途中で子宮全摘に切り替えざるを得ないことがある. 今回我々は, 妊娠中は核出術が困難な子宮頸部筋腫と診断されていたにも関わらず, 分娩後に体部筋腫と判明し核出術すなわち子宮温存が可能であった症例を経験したので報告する. 症例は35歳0回経妊0回経産. 近医にて子宮筋腫合併妊娠と診断され当科へ紹介となる. 内診, 腟鏡診にて子宮頸部に小児頭大の筋腫を認め, 外子宮口は側方へ著しく偏位していた. 妊娠36週4日のMRIでは, 小児頭大の筋腫が頸部と仙骨の間に発達しており経腟分娩不可能と...

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Published in日本医科大学医学会雑誌 Vol. 1; no. 4; p. 230
Main Authors 賀来佳男, 松島 隆, 藤江裕美, 沖野恵子, 深見武彦, 小西英喜, 可世木久幸, 朝倉啓文
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2005
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ISSN1349-8975

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Summary:子宮筋腫核出術では, 妊孕性の維持を目的に筋腫のみを核出し子宮は温存する. 頸部筋腫に対する手術では, 核出術施行途中で子宮全摘に切り替えざるを得ないことがある. 今回我々は, 妊娠中は核出術が困難な子宮頸部筋腫と診断されていたにも関わらず, 分娩後に体部筋腫と判明し核出術すなわち子宮温存が可能であった症例を経験したので報告する. 症例は35歳0回経妊0回経産. 近医にて子宮筋腫合併妊娠と診断され当科へ紹介となる. 内診, 腟鏡診にて子宮頸部に小児頭大の筋腫を認め, 外子宮口は側方へ著しく偏位していた. 妊娠36週4日のMRIでは, 小児頭大の筋腫が頸部と仙骨の間に発達しており経腟分娩不可能と診断. 妊娠37週2日に帝王切開術施行. 術中, 子宮後側に10cm大の筋腫と, その下方に7cm大の筋腫を認めた. 分娩から半年後のMRIでは, 筋腫は子宮体部背側漿膜下にあり, 子宮頸部が明確に確認され頸部筋腫でなく体部筋腫であると診断. 分娩から1年後, 妊孕性維持のために腹式子宮核出術を施行. 体部後壁の小児頭大の漿膜下筋腫を核出. 術後経過は良好であった. 通常, 子宮筋腫合併妊娠における体部筋腫は胎児の増大ともに頭側に位置を移動するが, 本症例では体部筋腫でありながら子宮頸部を圧迫して頸部筋腫の様相を示していた. 頸部筋腫か体部筋腫かの画像診断は分娩後まで明らかでない場合があり, 核出術すなわち子宮温存の可能性は最後まで捨てられない.
ISSN:1349-8975