7)HMG-CoA還元酵素阻害薬は心不全患者における単球上炎症性サイトカインの発現を抑制する
目的:Interleukin-6(IL-6), IL-1β等の炎症性サイトカインは心不全の発症, 悪化に深く関与している. HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)は多面的作用を有し, 心筋虚血を改善し, 血中サイトカイン濃度を低下させる. スタチンは心不全を改善し, 心事故を減少させる可能性がある. 方法:対象は慢性心不全患者(52例, 拡張型心筋症36例, 虚血性心筋症16例, ACE阻害薬を3ヵ月以上投与, 平均EF26%). 高脂血症の有無でスタチン投与群(S;n=26), 非投与群(N;n=26)の2群に分類. 両群間で, 心エコー図より求めた左室駆出率(EF), lipopolys...
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Published in | Journal of Nippon Medical School Vol. 71; no. 3; pp. 228 - 229 |
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Main Authors | , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本医科大学医学会
2004
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ISSN | 1345-4676 |
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Summary: | 目的:Interleukin-6(IL-6), IL-1β等の炎症性サイトカインは心不全の発症, 悪化に深く関与している. HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)は多面的作用を有し, 心筋虚血を改善し, 血中サイトカイン濃度を低下させる. スタチンは心不全を改善し, 心事故を減少させる可能性がある. 方法:対象は慢性心不全患者(52例, 拡張型心筋症36例, 虚血性心筋症16例, ACE阻害薬を3ヵ月以上投与, 平均EF26%). 高脂血症の有無でスタチン投与群(S;n=26), 非投与群(N;n=26)の2群に分類. 両群間で, 心エコー図より求めた左室駆出率(EF), lipopolysaccahride刺激時の単球上サイトカイン濃度(ELISAにて測定)をスタチン投与前, 6ヵ月後に測定. また, 心事故(心不全悪化による再入院, 心不全死)の有無を検討. 結果:1)スタチン投与6ヵ月後, S群のEFは改善傾向(p=0.06), N群は変化なし. 2)S群の単球上サイトカイン(IL-6, IL-1β)濃度は有意に減少, N群で差なし. 3)平均2.2年の経過観察中, N群の心事故は12例に対し, S群で3例のみ(p=0.02). 4)両群間で, 年齢, 薬物療法, 基礎疾患, 心不全重症度分類のNYHA, EFに差なし. 総括:HMG-CoA還元酵素阻害薬は, 心不全患者の単球上炎症性サイトカインの発現を抑制し, 心事故を減少させる. 印象記 平成15年11月22日(土)日本医科大学医学会第111回例会が, 付属多摩永山病院のC棟2階集会室で開催された. 例会幹事が相談し「免疫学的変化と疾患」というテーマを設定した. 耳鼻咽喉科学の富山俊一教授の特別講演と一般演題で行う企画とした. テーマに免疫異常という病態を設定したためか, 残念ながら技師, 看護師, 薬剤師からの応募を頂けなかったのかもしれない. 結果的に, 一般演題は7題であり, 疾病疫学的調査から遺伝子関連の報告まで, 活発な討論がなされ, 例会は盛り上がった. 一般演題は, いずれも臨床現場における最新の情報を提供するものであり, 特に感音性難聴の病因として自己免疫傷害が関与しているものがあるという発表, 妊娠中毒とNK細胞, 血管内皮細胞の関連についての研究報告, 高脂血症治療に汎用されているHMG還元酵素阻害薬の炎症性サイトカインの発現抑制についての発表は, 注目すべき最新の話題提供となった. 特別講演では, 富山教授が「メニエール病における免疫傷害病因」と題し, 疾患背景の解説とともに診療現場からの情報をもとに, メニエール感音性難聴における免疫傷害の関与を具体例を示し解りやすく講演され, 最後まで聴講された参加者は満足させて頂き, 主催者として面目が保たれたものと思う.(新博次, 富山俊一) |
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ISSN: | 1345-4676 |