C型慢性肝炎のインターフェロン治療効果と免疫遺伝子学的検討 診療教授特別講演(1)

C型肝炎ウイルス(HCV)は, 1988年に米国カイロン社により遺伝子クローニングが報告され, その存在が明らかにされたウイルスである. HCV感染の特徴は, B型肝炎ウイルス(HBV)の感染とは異なり, 免疫系が成熟した成人が初感染を受けた場合でも高率にキャリア化する点であり, C型慢性肝炎の多くは肝硬変, 肝細胞癌へと進展するため, 肝病変の進展阻止が極めて重要な課題となっている. 近年, 抗ウイルス効果を有するとされるインターフェロン(IFN)の登場により, C型肝炎ウイルスの排除に対しIFN治療が有効であることが報告され, 本邦では1992年1月からC型慢性活動性肝炎に対しIFN治療が...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 70; no. 3; p. 288
Main Author 黒田肇
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2003
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ISSN1345-4676

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Summary:C型肝炎ウイルス(HCV)は, 1988年に米国カイロン社により遺伝子クローニングが報告され, その存在が明らかにされたウイルスである. HCV感染の特徴は, B型肝炎ウイルス(HBV)の感染とは異なり, 免疫系が成熟した成人が初感染を受けた場合でも高率にキャリア化する点であり, C型慢性肝炎の多くは肝硬変, 肝細胞癌へと進展するため, 肝病変の進展阻止が極めて重要な課題となっている. 近年, 抗ウイルス効果を有するとされるインターフェロン(IFN)の登場により, C型肝炎ウイルスの排除に対しIFN治療が有効であることが報告され, 本邦では1992年1月からC型慢性活動性肝炎に対しIFN治療が保険診療の適応となって以来, これまで多くの患者で治療が行われてきた. IFN治療は, (1)究極的には抗ウイルス効果によるHCVの排除と肝炎の治癒にあるが, (2)たとえ, HCVの完全排除が困難であってもGPTの改善による肝病変の進展阻止あるいは遅延を目的としている. その治療効果については, 主としてHCV genotype, HCV RNA量およびHCV非構造蛋白NS5A領域の遺伝子変異などのウイルス面から検討されてきた. HCVにはアミノ酸配列の相同性により, いくつかのHCV genotypeが存在し, HCV genotypeおよび血中HCV RNA量の違いによりIFN治療効果に差があり, 本邦に多いHCV genotype 1bや高ウイルス量ではIFN治療に抵抗を示す症例が多く, HCV genotype 2aや低ウイルス量では著効例が多いことが知られている. しかし, 同じウイルス株あるいは同程度のウイルス量であっても相反する結果を示す症例が少なからず存在するため, これらの症例についてはウイルス学的側面のみから治療効果を論ずることが難しく, 宿主側要因を検討することが必要である. ヒト主要組織適合抗原(HLA)は宿主の免疫応答に重要な役割を担っており, C型慢性肝炎患者間のHLA typeの違いによって治療効果に差が生じることが考えられる. そこで, 遺伝子組換え型IFN α-2aにて治療した症例について, IFN治療効果とHLAとの関連性を解析した結果, HLA B52, DRB1*1502/DQB1*0601 haplotypeが"IFN治療効果の無効"を規定するHLA因子であることが示唆された.
ISSN:1345-4676