7)Helicobacter pylori感染別にみた背景胃粘膜の検討

はじめに:Helicobacter pulori(Hp)の長期感染が胃癌の発生に影響を及ぼすことが上村らにより明らかとされた(2001年). この背景をもとにHp陽性例, 陰性例の背景胃粘膜の病理学的特徴を検討した. 対象と方法:Hp陽性例:745例, 陰性例:680例の計1,325例を対象とした. 3点生検切片(#1:前庭部下部大彎側, #2:胃体上部大彎側, #3:胃体下部小彎側)の好中球活動度, 腺萎縮, 腸上皮化生, HpスコアはUpdated Sydney systemに基づき0~3の4段階に判定した. また, Hp陽性例においては前庭部下部大彎側(#1)に対する胃体上部大彎側(#2...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 69; no. 6; pp. 628 - 629
Main Authors 松久威史, 日下部史郎, 芳村昇治, 田原一郎, 高須勝, 宮本安盛, 高橋央, 前田昭太郎, 山田宣孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2002
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ISSN1345-4676

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Summary:はじめに:Helicobacter pulori(Hp)の長期感染が胃癌の発生に影響を及ぼすことが上村らにより明らかとされた(2001年). この背景をもとにHp陽性例, 陰性例の背景胃粘膜の病理学的特徴を検討した. 対象と方法:Hp陽性例:745例, 陰性例:680例の計1,325例を対象とした. 3点生検切片(#1:前庭部下部大彎側, #2:胃体上部大彎側, #3:胃体下部小彎側)の好中球活動度, 腺萎縮, 腸上皮化生, HpスコアはUpdated Sydney systemに基づき0~3の4段階に判定した. また, Hp陽性例においては前庭部下部大彎側(#1)に対する胃体上部大彎側(#2)の好中球活動度スコアの比(C/A比)についても観察した. 成績:Hp陽性例における#1, #3の好中球活動度スコアは加齢に伴い低くなるのに対し, #2のそれは上昇していた. その背景には#1, #3の腺萎縮, 腸上皮化生スコアの加齢性上昇が影響してるものと思われた. 一方, #2のそれらは有意な変化を示さなかった. C/A比は60歳を境に前庭部優位型胃炎から胃体部優位型胃炎に変化していた. Hp陰性例の#1, #2, #3の好中球活動度スコア, #1, #2の腺萎縮, 腸上皮化生スコアは加齢による変化を示さなかった. しかし, #3の腺萎縮, 腸上皮化生スコアは加齢に伴い上昇傾向にあった. 結論:胃体下部小彎側(#3)の腺萎縮, 腸上皮化生スコァはHp陽性例, 陰性例とも加齢による上昇を認めた. Hp陽性例のC/A比は, 60歳未満では前庭部優位型胃炎, 60歳以上では胃体部優位型胃炎を呈し, 日本人に胃癌が多いことを裏付けていた.
ISSN:1345-4676