7)生後一カ月に診断された小脳奇形腫の1女児例

はじめに:生後1ヵ月の小脳奇形腫の症例を経験した. 乳児期以前に出現する脳腫瘍自体稀で, 25,000人に1人という報告もある. さらに小児脳腫瘍全体の中で奇形腫の頻度は1.2%と稀で, その好発部位は松果体部, トルコ鞍部でありテントの正中に多い. 本症例は発症年齢, 組織型と発症部位が極めて稀な例と考えられ, ここに報告する. 症例:1ヵ月女児. 生後2週間より, 哺乳障害, 落陽現象, 泣き声の変化(甲高い声)が出現し, 7月5日, 近医受診後当科外来受診, 頭蓋内病変検索目的にて施行された脳CTにて著明な水頭症, 及び小脳にhigh density, low densityが混在する,...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 69; no. 2; p. 208
Main Authors 小川耕一, 松永成太, 川上康彦, 関隆志, 西澤善樹, 勝部康弘, 藤田武久, 松岡和彦, 土屋雅人, 高橋弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2002
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ISSN1345-4676

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Summary:はじめに:生後1ヵ月の小脳奇形腫の症例を経験した. 乳児期以前に出現する脳腫瘍自体稀で, 25,000人に1人という報告もある. さらに小児脳腫瘍全体の中で奇形腫の頻度は1.2%と稀で, その好発部位は松果体部, トルコ鞍部でありテントの正中に多い. 本症例は発症年齢, 組織型と発症部位が極めて稀な例と考えられ, ここに報告する. 症例:1ヵ月女児. 生後2週間より, 哺乳障害, 落陽現象, 泣き声の変化(甲高い声)が出現し, 7月5日, 近医受診後当科外来受診, 頭蓋内病変検索目的にて施行された脳CTにて著明な水頭症, 及び小脳にhigh density, low densityが混在する, 腫瘍と思われるエリアを指摘され, 精査入院した. 妊娠分娩歴家族歴:特記すべきことなし 入院時検査所見:hCG1.0mIU/ml以下, AFP3,637.1ng/ml, CEA3.0ng/ml 入院後経過:入院後すみやかにOmmaya tube設置術を施行された. 定期的な髄液採取により水頭症は軽快傾向を示したが, 入院時の脳CTにて指摘された腫瘍は経時的に拡大傾向を示した. 放置すれば腫瘍が脳幹部を圧迫し生命に危機を及ぼす可能性もあったことから8月3日, 腫瘍除去術を施行された. 腫瘍は直径6mm~10mm程度のものが散在していた. 摘出された腫瘍は病理診断にてtera-toma(immature type)と診断された. その後硬膜形成術, 血腫除去術を経て10月5日現在経過観察中である. 考察:落陽現象, 甲高い泣き声に変わってきた等の症状より, 頭蓋内病変を疑い脳CT等を施行, すみやかな診断, 治療に結びついた例であった. 注意深いアナムネーゼ聴取診察の重要性を再認識した.
ISSN:1345-4676