P-60)盲腸憩室からの大量出血に対して緊急動脈塞栓術が奏功した1治験例

緒言:消化器病診療の現場において, 消化管出血はプライマリ, ケア上重要な症候の一つである. 消化管出血の原因の一つとして, 近年, 大腸憩室が増加傾向にある. 憩室出血の大半が保存的治療で止血するが, 遷延する場合には積極的止血処置を必要とする. 今回, 盲腸憩室出血に対し緊急動脈塞栓術が奏功した1例を経験したので報告する. 症例:患者は65歳の男性で, 下血を主訴として来院した. 緊急内視鏡検査では, 新鮮血液凝固塊を大量に認めるものの, 病変部位は同定できなかった. 下血がさらに続き, 患者はショック状態に陥ったため, 同日, 緊急血管造影検査を施行した. 上腸間膜動脈造影で盲腸内側部の...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 68; no. 6; pp. 589 - 590
Main Authors 高島良樹, 沖浜裕司, 松田健, 永嶋裕司, 平本義浩, 江上格, 吉岡正智, 恩田昌彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2001
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Summary:緒言:消化器病診療の現場において, 消化管出血はプライマリ, ケア上重要な症候の一つである. 消化管出血の原因の一つとして, 近年, 大腸憩室が増加傾向にある. 憩室出血の大半が保存的治療で止血するが, 遷延する場合には積極的止血処置を必要とする. 今回, 盲腸憩室出血に対し緊急動脈塞栓術が奏功した1例を経験したので報告する. 症例:患者は65歳の男性で, 下血を主訴として来院した. 緊急内視鏡検査では, 新鮮血液凝固塊を大量に認めるものの, 病変部位は同定できなかった. 下血がさらに続き, 患者はショック状態に陥ったため, 同日, 緊急血管造影検査を施行した. 上腸間膜動脈造影で盲腸内側部の回結腸動脈末梢枝から造影剤の血管外漏出像とプーリングを認め, 盲腸憩室からの出血を強く疑った. 同部に動脈塞栓術(coiling)を施行し, 併せてバゾプレッシンを注入して, 止血に成功した. 後日, 大腸内視鏡および注腸造影検査で出血部に一致して多数の盲腸憩室を認め, 同憩室からの出血と診断された. なお, 同部位周辺の粘膜に塞栓術に伴う虚血性変化はみられなかった. 患者は, 第20病日に軽快退院し, その後も再出血は認められていない. 考察:近年, interventional radioIogy(IVR)の適応が拡大されつつある. 大腸憩室からの出血の多くは保存的治療で止血するが, 本症例のような大量出血例や保存的に止血困難な症例には緊急動脈塞栓術を含むIVRが極めて有効な治療法になることがある.
ISSN:1345-4676