4)肺膿瘍,肝膿瘍を併発した慢性肉芽腫症の1例

はじめに:慢性肉芽腫症は食細胞におけるNADPHを基質とした活性酸素産生の際の酵素(gp91-, p22-, p47-, p67-phagocyte oxidase)のいずれかの欠損または機能異常が原因でおこる先天性免疫不全症のひとつであり, 現在ではその遺伝子レベルでの解析もされている. また, 乳児期より重症感染症を繰り返す疾患であり, 米国NIHの統計では平均死亡年齢は10歳8ヵ月と非常に予後が悪い. また, 食細胞機能異常症研究会によると日本では1997年末までで213名の患者が確認されており, 患者出生頻度は25万人出生あたり1から2人となる. 今回, われわれは肺膿瘍, 肝膿瘍を併...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 68; no. 2; p. 209
Main Authors 大磯義一郎, 城所葉, 角岡真帆, 琴寄誠, 中塚雄久, 小野瀬裕之, 藤森俊二, 吉澤雅史, 江本直也, 岸田輝幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2001
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Summary:はじめに:慢性肉芽腫症は食細胞におけるNADPHを基質とした活性酸素産生の際の酵素(gp91-, p22-, p47-, p67-phagocyte oxidase)のいずれかの欠損または機能異常が原因でおこる先天性免疫不全症のひとつであり, 現在ではその遺伝子レベルでの解析もされている. また, 乳児期より重症感染症を繰り返す疾患であり, 米国NIHの統計では平均死亡年齢は10歳8ヵ月と非常に予後が悪い. また, 食細胞機能異常症研究会によると日本では1997年末までで213名の患者が確認されており, 患者出生頻度は25万人出生あたり1から2人となる. 今回, われわれは肺膿瘍, 肝膿瘍を併発した慢性肉芽腫症の1例を経験したので報告する. 症例:17歳男性. 平成11年10月より腹痛, 発熱を認めたため平成11年10月15日当院外来受診, WBC27,460, CRP17.4を認め, 同日入院となった. CT上左肺膿瘍, 肝膿瘍を認め, 喀痰培養よりMRSAおよびCandida albicansが検出されたため, 左肺膿瘍に対し外科的ドレナージを施行した. 同時にVCM0. 92mg, RFP300mg, CLDM400mg, AMPH300mg, などによる多剤併用療法を行った. 平成12年5月23日施行のCTで肺膿瘍の改善が認められた. 平成12年8月11日の腹部CTでは肝膿瘍の改善も認められ, CRP1.06となったが, 平成12年11月現在, 未だ完治せず多剤併用療法にても再燃, 寛解を繰り返している. まとめ:慢性肉芽腫症の患者は, 10歳までは重症細菌感染症, 10代後半からはアスペルギルスなどの真菌感染症が致命的となり, その治療には集学的医療を必要とする. また, 最近ではINF-γ, BMT, 遺伝子治療などの研究が進められており, 今後の進展が期待される.
ISSN:1345-4676
1347-3409