P-6)組織診断後の適切な補助療法選択により劇的なQOL改善を認めた転移性脳腫瘍の1例

転移性脳腫瘍は癌患者の末期像であり, 一般的に積極的な治療の適応となり難い. さらに, 病巣が多発性の場合は外科的治療は不可能と思われ, 放射線治療および化学療法や, ADL悪化を防止するための対処療法が主体となることがほとんどである. 本症例は多発性の脳腫瘍であり, 癌の既往はないものの, 肺病変もあり肺原発の転移性脳腫瘍が疑われ, 一見すると積極的治療の適応はないと思われた. しかし, 局所症状に乏しく意識障害が主体であったため頭蓋内の治療を優先した. 病巣部の内, 浮腫が著明であった右頭頂部分の摘出術を施行し, small cell carcinomaの診断に至ったため, 肺病巣の生検は...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 67; no. 6; p. 514
Main Authors 北川亮, 饒波正博, 山田昌興, 佐々木光由, 高橋弘, 寺本明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2000
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Summary:転移性脳腫瘍は癌患者の末期像であり, 一般的に積極的な治療の適応となり難い. さらに, 病巣が多発性の場合は外科的治療は不可能と思われ, 放射線治療および化学療法や, ADL悪化を防止するための対処療法が主体となることがほとんどである. 本症例は多発性の脳腫瘍であり, 癌の既往はないものの, 肺病変もあり肺原発の転移性脳腫瘍が疑われ, 一見すると積極的治療の適応はないと思われた. しかし, 局所症状に乏しく意識障害が主体であったため頭蓋内の治療を優先した. 病巣部の内, 浮腫が著明であった右頭頂部分の摘出術を施行し, small cell carcinomaの診断に至ったため, 肺病巣の生検は必要なくなった. 組織診断の結果を踏まえて, 放射線治療と化学療法を併用した結果, 肺病巣部は変化を認めなっかたが, 頭蓋内病巣は劇的に縮小し, 意識清明となり社会復帰に至った. 通常, 脳にはBBBが存在するため肺病変に比べ化学療法の効果は低いと言われている. しかし, 今回の様に頭蓋内病変の方が効果を示すこともあり, 原発病巣のコントロールがなされていない症例でも, QOL向上の目的に積極的治療の適応となる症例もある.
ISSN:1345-4676
1347-3409