2.成人型Still病の1例

症例は56歳女性. 発熱, 関節痛が続くため近医受診, 抗生物質等により加療されたが, 症状は改善されず, 当科に紹介された. 入院時, 日内変動の大きい弛張熱, 熱に伴う関節痛, 掻痒感を伴う非定型的な皮疹が認められた. 表在リンパ節は触知されなかった. WBCは18,710/ul CRPは14.5mg/dlと上昇, 赤沈値は60mm/hと亢進, 発熱の原因につき検索を開始した結果, 胸部レントゲン写真で左右下肺野に陳旧性炎症性瘢痕が認められたが明らかな感染症はなく, 悪性腫瘍についてもほぼ全身の検索を施行したが異常は認められなかった. また, 抗核抗体を除き種々の自己抗体は陰性で, 手指,...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 67; no. 4; p. 290
Main Authors 宜保陽介, 寺田秀人, 伊佐治剛, 保倉利江, 網谷賢一, 山口朋禎, 高橋直人, 酒井行直, 西垣朝裕, 澤理人, 内田高浩, 山室学, 櫛方美文, 齋藤寛和, 村澤恒男, 北村伸, 宗像一雄, 畑三恵子, 沼野香世子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 2000
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ISSN1345-4676

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Summary:症例は56歳女性. 発熱, 関節痛が続くため近医受診, 抗生物質等により加療されたが, 症状は改善されず, 当科に紹介された. 入院時, 日内変動の大きい弛張熱, 熱に伴う関節痛, 掻痒感を伴う非定型的な皮疹が認められた. 表在リンパ節は触知されなかった. WBCは18,710/ul CRPは14.5mg/dlと上昇, 赤沈値は60mm/hと亢進, 発熱の原因につき検索を開始した結果, 胸部レントゲン写真で左右下肺野に陳旧性炎症性瘢痕が認められたが明らかな感染症はなく, 悪性腫瘍についてもほぼ全身の検索を施行したが異常は認められなかった. また, 抗核抗体を除き種々の自己抗体は陰性で, 手指, 肘, 膝関節のレントゲン写真でも骨破壊像は認められず, 慢性関節リュウマチおよび他の膠原病は否定的であった. 臨床検査においてはGOTが59IU/L, GPTが84IU/Lと高値を示し, フェリチンが34,278ng/mlと異常高値を示した. 以上の臨床経過, 検査所見を厚生省研究班の成人型Still病(以下AOSD)の診断基準案に照らし, 当疾患の診断に至った. AOSDは特異的な臨床症状や検査成績を示すことは少なく, 不明熱の鑑別など診断は必ずしも容易ではない. 関節破壊が進行する症例もあり, 早期に適切な診療をすることが必要であるにもかかわらず, 診断に苦慮した1例と考え報告した.
ISSN:1345-4676