14)泌尿器癌の染色体・遺伝子異常

多くの悪性腫瘍と同様に泌尿器癌も染色体および遺伝子異常において多様性を示す. 泌尿器癌は, 主に腎細胞癌, 膀胱癌, 前立腺癌の3つに分類される. 腎細胞癌では第3番染色体短腕(3p)の広範囲なヘテロ接合性の消失(LOH)が認められており, 主な原因遺伝子として3q25-26に限局するVHL遺伝子が同定され, その変異が報告されている. 膀胱癌は形態学的に表在癌と浸潤癌に区別されるが, 分子生物学的にみてもその発生, 進展経路が異なる傾向にある. 表在性乳頭状癌では9pおよび9qの異常が高頻度に見られ, 9p21に存在するp16遺伝子の異常が強く関与し, 浸潤癌では多くの染色体異常はすでにある...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 65; no. 4; p. 340
Main Authors 大垣憲司, 堀内和孝, 秋元成太, 江見充
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 1998
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Summary:多くの悪性腫瘍と同様に泌尿器癌も染色体および遺伝子異常において多様性を示す. 泌尿器癌は, 主に腎細胞癌, 膀胱癌, 前立腺癌の3つに分類される. 腎細胞癌では第3番染色体短腕(3p)の広範囲なヘテロ接合性の消失(LOH)が認められており, 主な原因遺伝子として3q25-26に限局するVHL遺伝子が同定され, その変異が報告されている. 膀胱癌は形態学的に表在癌と浸潤癌に区別されるが, 分子生物学的にみてもその発生, 進展経路が異なる傾向にある. 表在性乳頭状癌では9pおよび9qの異常が高頻度に見られ, 9p21に存在するp16遺伝子の異常が強く関与し, 浸潤癌では多くの染色体異常はすでにあるが, 中でも17p13に存在するp53遺伝子の異常が強く関与しているといわれている. 前立腺癌にはRB遺伝子やp53遺伝子などの癌固有の基本的特性に関する遺伝子群の異常と, AR遺伝子などの前立腺組織の特異性に関する遺伝子群の異常, およびKAI-1遺伝子に代表される浸潤, 転移に関する遺伝子の異常が現在までに報告されている. さらに泌尿器癌の発生, 進展にはこれら以外に多くの染色体, 遺伝子異常が複雑に絡み合っていると考えられている.
ISSN:1345-4676
1347-3409