9)心拍動下(off pump)CABGがもたらした冠動脈バイパス術における可能性
目的:外科手術の各分野で低侵襲が唱えられるようになってきた. 1969年に米国で始められて以来, これまで術式に様々な工夫が試みられ, 進歩を重ねてきた冠動脈バイパス術においても, 近年, 低侵襲の概念が持ち込まれ, 手術適応を大きく変える可能性をもたらした. それは, 人工心肺を用いずにグラフトと冠動脈吻合を行う心拍動下(off pump)CABGである. 本術式について検討した. 対象:1997年3月より12月までにoff pump CABG症例を21例(平均年齢64.6±12.6歳, 31~80歳)を施行した. 結果:胸骨正中切開症例は10例. 第4肋間左前方小開胸症例は11例であった....
Saved in:
Published in | Journal of Nippon Medical School Vol. 65; no. 2; pp. 183 - 184 |
---|---|
Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本医科大学医学会
1998
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 1345-4676 |
Cover
Summary: | 目的:外科手術の各分野で低侵襲が唱えられるようになってきた. 1969年に米国で始められて以来, これまで術式に様々な工夫が試みられ, 進歩を重ねてきた冠動脈バイパス術においても, 近年, 低侵襲の概念が持ち込まれ, 手術適応を大きく変える可能性をもたらした. それは, 人工心肺を用いずにグラフトと冠動脈吻合を行う心拍動下(off pump)CABGである. 本術式について検討した. 対象:1997年3月より12月までにoff pump CABG症例を21例(平均年齢64.6±12.6歳, 31~80歳)を施行した. 結果:胸骨正中切開症例は10例. 第4肋間左前方小開胸症例は11例であった. このうち, 肺機能が悪いために開胸を避ける目的で胸骨正中切開とした症例が2例, 右冠動脈領域のbypassのために胸骨正中切開とした症例が2例であった. 全症例では1枝bypassが17例, 2枝が3例, 3枝が1例であった. 動脈グラフトは24本, 静脈グラフトは2本であり, 術後早期のpatency rateは100%である. 考察:off pump CABGは従来の体外循環下に心停止をさせて行うCABGに比べて, 心拍動下で血管吻合を求められる非常に難しい術式である. しかし, 手術時間の短縮, 人工心肺の非使用, 少ない出血量, ICU滞在時間の短縮からみても患者にとって低侵襲であり, また高度腎機能低下, 低肺機能症例, 脳血管障害, 坦癌症例や高齢者などの体外循環high risk症例においても有効な術式である. |
---|---|
ISSN: | 1345-4676 |