P-74)主膵管拡張描出困難な膵嚢胞腺癌の1例

目的:腹部超音波(US)における膵癌の重要な所見として, 主膵管の拡張がある. 腫瘤像が描出困難においても, 主膵管の拡張を認めた場合は, 悪性腫瘍を疑い検査を進めていくのが一般的である. 今回, 我々が経験した症例は, 主膵管の拡張を認めない膵嚢胞腺癌であった. また, これは本来の好発部位ではない膵頭部に発生し, 嚢胞部分と充実部分が明瞭に区別できたことも含めて報告する. 結果:症例は57歳女性. 精査目的にてUS施行. USでは脾静脈上に境界明瞭な直径8cm大のモザイク状エコーを呈する充実性腫瘤像を認め, これに接した内部に不整形な隆起物を有する嚢胞エコー像を確認した. しかし, 主膵管...

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Published inJournal of Nippon Medical School Vol. 63; no. 6; p. 558
Main Authors 西村とき子, 町田幸雄, 石渡統夫, 亀山雅弥, 野本剛史, 水野杏一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本医科大学医学会 1996
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ISSN1345-4676

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Summary:目的:腹部超音波(US)における膵癌の重要な所見として, 主膵管の拡張がある. 腫瘤像が描出困難においても, 主膵管の拡張を認めた場合は, 悪性腫瘍を疑い検査を進めていくのが一般的である. 今回, 我々が経験した症例は, 主膵管の拡張を認めない膵嚢胞腺癌であった. また, これは本来の好発部位ではない膵頭部に発生し, 嚢胞部分と充実部分が明瞭に区別できたことも含めて報告する. 結果:症例は57歳女性. 精査目的にてUS施行. USでは脾静脈上に境界明瞭な直径8cm大のモザイク状エコーを呈する充実性腫瘤像を認め, これに接した内部に不整形な隆起物を有する嚢胞エコー像を確認した. しかし, 主膵管の拡張, 中断像は描出困難であった. 以上US所見より, 本症例は膵嚢胞性疾患が示唆され, X線CT, 血管造影, 病理組織検査を行い膵嚢胞腺癌と診断された. まとめ:本症例は上記結果より漿液産生の膵嚢胞腺癌と考えられた. また, 膵嚢胞性疾患では, それが明らかに膵由来であるか, 近傍臓器からであるか確認することが大切である. その嚢胞が嚢胞の3条件(内部エコーが無エコーであること, 後方の増強があること, 境界明瞭でほぼ円形であること)を満たさない症例は, 腫瘍性嚢胞, 癌による2次性嚢胞を考え, 検査を進めていくべきである.
ISSN:1345-4676