48. 自然尿中に腫瘍細胞が出現した尿膜管癌の1例

膀胱に発生する癌は移行上皮癌がほとんどを占めており, 膀胱腺癌の発生頻度は0.5~2.0%と比較的稀とされている. 尿膜管癌は膀胱頂部に残存する尿膜管索から発生し腺癌の形態を示すことが多い. 今回我々は自然尿中に出現した尿膜管癌の1例を経験したので報告する. 〔症例〕40歳, 男性. 肉眼的血尿にて来院. エコー上膀胱腫瘍の疑いあり, 膀胱鏡検査で膀胱頂部に直径約2cm の広基制で表面smooth な腫瘍が認められた. 来院時の自然尿による細胞診では小型の異型性のある細胞が孤立散在性に見られ, 更に膀胱鏡下生検と手術材料で腺癌と診断された. 〔細胞診所見〕血性背景強く壊死物質が見られた. それ...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 53; no. 4; pp. 723 - 724
Main Authors 佐藤宏幸, 樋渡光雄, 星健二, 永島亮弐, 赤池康, 越智雅典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農村医学会 2004
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Summary:膀胱に発生する癌は移行上皮癌がほとんどを占めており, 膀胱腺癌の発生頻度は0.5~2.0%と比較的稀とされている. 尿膜管癌は膀胱頂部に残存する尿膜管索から発生し腺癌の形態を示すことが多い. 今回我々は自然尿中に出現した尿膜管癌の1例を経験したので報告する. 〔症例〕40歳, 男性. 肉眼的血尿にて来院. エコー上膀胱腫瘍の疑いあり, 膀胱鏡検査で膀胱頂部に直径約2cm の広基制で表面smooth な腫瘍が認められた. 来院時の自然尿による細胞診では小型の異型性のある細胞が孤立散在性に見られ, 更に膀胱鏡下生検と手術材料で腺癌と診断された. 〔細胞診所見〕血性背景強く壊死物質が見られた. それらを背景に核型不整, クロマチン増量, 粗顆粒状の核を有する腫瘍細胞が孤立散在性に少数見られた. N/C 比はやや大きく, 一部核の偏在性を思わせる細胞も見られた. 〔組織診所見〕腺癌細胞がポリープ状外方向性の発育と壁内への浸潤性進展がみられた. 組織学的にはcolon cancer 同様の高円柱上皮からなるadenocarcinoma であり粘液産生(+), 免疫組織学的にはCK7(-)/CK20(+)であり colorectal carcinoma 同様の染色態度を示した. Transitional cell carcinoma のcomponent は含まなかった. 〔考察〕尿中の細胞形態は細胞の膨化, 核の濃縮, 破壊などの変性が加わり易く診断上細胞の同定, 良悪性の判断が困難な場合がしばしばある. 異型性のある細胞の, 良悪性の鑑別や稀な組織型の腫瘍を推定診断するためには常に臨床情報を取り入れて診断することが重要と思われた.
ISSN:0468-2513