3. 病因特定が困難であった甲状腺機能亢進症の1症例

〔症例〕44歳, 男性. 〔主訴〕動悸, 右側上肢のしびれ, 手指振戦, 体重減少, 全身倦怠感. 〔既往歴〕アレルギー性鼻炎, 高尿酸血症にて現在投薬治療中. 〔家族歴〕特記すべき事なし. 〔生活歴〕飲酒ビール1本/日, 喫煙4本/日. 〔現病歴〕2002年12月ころより右側の手指を中心としたしびれおよび両側手指の振戦と動悸が出現. 体重も6kg 減少している. 2003年1月17日受診. 身長158cm, 体重57kg, 血圧135/72mmHg, 脈拍90/min, 体温36.5℃, 甲状腺の疼痛(-), 甲状腺腫大(-), 軟. 眼症状(-). TSH<0.03uIU/ml, GLU9...

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Published in日本農村医学会雑誌 Vol. 53; no. 4; p. 696
Main Authors 小林隆彦, 棚瀬健仁, 前田益孝, 椎貝達夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本農村医学会 2004
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Summary:〔症例〕44歳, 男性. 〔主訴〕動悸, 右側上肢のしびれ, 手指振戦, 体重減少, 全身倦怠感. 〔既往歴〕アレルギー性鼻炎, 高尿酸血症にて現在投薬治療中. 〔家族歴〕特記すべき事なし. 〔生活歴〕飲酒ビール1本/日, 喫煙4本/日. 〔現病歴〕2002年12月ころより右側の手指を中心としたしびれおよび両側手指の振戦と動悸が出現. 体重も6kg 減少している. 2003年1月17日受診. 身長158cm, 体重57kg, 血圧135/72mmHg, 脈拍90/min, 体温36.5℃, 甲状腺の疼痛(-), 甲状腺腫大(-), 軟. 眼症状(-). TSH<0.03uIU/ml, GLU95mg/dl, Hba1c5.0%, T-chol196mg/dl, LDH244IU/l, GOT32IU/l. 再受診時(1月23日), FT3 5.86pg/ml, FT4 1.90ng/dl, 抗甲状腺サイログロブリン抗体(ATG)<100倍, 抗甲状腺マイクロゾーム抗体(AMG)<100倍, 抗サイログロブリン抗体0.5U/ml, TSH レセプター抗体(TRAb)6.4%, TSH 刺激性レセプター抗体(TSAb)153%, カルシトニン13pg/ml. 甲状腺エコーでは甲状腺両葉と狭部の腫大は, 認められなかったが両葉に低エコー小腫瘤多発を認めた. 甲状腺放射性ヨード摂取率23.2%. 臨床症状が強かったため, 1月24日よりメルカゾール30mg 開始となって, 3月29日FT3 3.91ng/ml, FT4 1.43ug/dl, TSH<0.03uIU/ml と改善傾向にある. 鑑別診断として, Basedow病, 無痛性甲状腺炎, Plummer 病が上げられるが, 検査結果, 臨床経過よりBasedow病が最も疑われた. 特にBasedow 病と, それ以外の甲状腺機能亢進症は治療方針が異なるため, 甲状腺機能亢進症でTRAb とTSAb がともに正常, 甲状腺放射性ヨード摂取率正常, 甲状腺腫大を認めず, 診断に苦慮した症例であった.
ISSN:0468-2513