P-20 若齢ラット空間認知機能に及ぼすエゴマ油摂取の影響

【目的】エゴマ(Perilla frutescens var.japonica)の種子より搾油される“エゴマ油”は, α-リノレン酸に富む食用油である. α-リノレン酸は, それ自体の機能性に加え, 同じn-3系不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などに変換されることから, 様々な生理・薬理作用が期待できる必須不飽和脂肪酸である. 本研究では, このエゴマ油を若齢ラットに投与し, 空間認知機能への影響について検討した. 【実験方法】2世代にわたりn-3系不飽和脂肪酸欠乏食で飼育したWistar系ラット(8週令, 雄性)に, 田村種(白)のエゴマ種子から...

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Published in脂質栄養学 Vol. 17; no. 2; p. 160
Main Authors 神田聡, 橋本道男, 片倉賢紀, 田邊洋子, 西本聖子, Md.Hossain Shahdat, 紫藤治, 高田秀穂
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本脂質栄養学会 2008
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Summary:【目的】エゴマ(Perilla frutescens var.japonica)の種子より搾油される“エゴマ油”は, α-リノレン酸に富む食用油である. α-リノレン酸は, それ自体の機能性に加え, 同じn-3系不飽和脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)などに変換されることから, 様々な生理・薬理作用が期待できる必須不飽和脂肪酸である. 本研究では, このエゴマ油を若齢ラットに投与し, 空間認知機能への影響について検討した. 【実験方法】2世代にわたりn-3系不飽和脂肪酸欠乏食で飼育したWistar系ラット(8週令, 雄性)に, 田村種(白)のエゴマ種子から搾油したエゴマ油を経口投与(300mg/Kg-Rat weight/day)した. 血中α-リノレン酸の増加が認められた後, 投与開始後の13週目より8走路放射状迷路課題法を実施し, 空間認知機能を評価した. 迷路実験終了後(投与開始後8ヶ月), 血液, 大脳皮質, 海馬の脂肪酸分析を行った. また, 血液生化学検査項目を測定し, 血清脂質, 腎機能, 肝機能に及ぼす影響も検討した. 【結果及び考察】実験に使用したエゴマ種(田村種, 白)から搾油した油は, 約60%のα-リノレン酸を含有し, これを経口投与されたラットの血中には, α-リノレン酸のみならずEPAやDHAの増加がみられた. また, 血液生化学検査の結果, 総コレステロールの減少はみられたが, 腎機能, 肝機能に及ぼす影響はみられなかった. 放射状迷路課題法により空間認知機能を評価したところ, エゴマ油投与群は対照群に比べて, 長期記憶能を反映するとされる参照記憶エラー数が, 約40試行後より有意に減少したことから, 摂餌性エゴマ油による記憶・学習機能への向上効果が示唆された. 若齢ラットへのエゴマ油投与が, EPAやDHAの投与と同様な空間認知機能向上効果をもたらしたことから, エゴマ油がEPAやDHAの供給源となりうる可能性が示唆され, ヒト介入試験の実施が大いに望まれる.
ISSN:1343-4594