高齢化の進むハンセン病療養施設におけるうつ病の臨床的特微について

ハンセン病国立療養所のなかのひとつである国立療養所多磨全生園における精神科治療の実情を報告した. また, 平成12年から平成16年までに精神科外来通院中ないし通院歴のある寛解しているうつ病患者において, 罹患年数, 精神症状の特徴, 寛解期における精神症状尺度の調査を行った. 抑うつ症状としては心気, 身体症状が特徴的であった. うつ病スケールと隔離期間との相関は認められなかった. また施設設立(明治42年)から平成18年1月までの期間中に確認された自殺者は42名であり, 精神障害の関与が疑われた例も認められた. また高齢者の自殺も発生していた. 高齢化の進むハンセン病療養施設においては, う...

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Published in日本ハンセン病学会雑誌 Vol. 76; no. 1; pp. 3 - 9
Main Authors 西多昌規, 中村ゆかり, 青崎 登
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本ハンセン病学会 2007
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Summary:ハンセン病国立療養所のなかのひとつである国立療養所多磨全生園における精神科治療の実情を報告した. また, 平成12年から平成16年までに精神科外来通院中ないし通院歴のある寛解しているうつ病患者において, 罹患年数, 精神症状の特徴, 寛解期における精神症状尺度の調査を行った. 抑うつ症状としては心気, 身体症状が特徴的であった. うつ病スケールと隔離期間との相関は認められなかった. また施設設立(明治42年)から平成18年1月までの期間中に確認された自殺者は42名であり, 精神障害の関与が疑われた例も認められた. また高齢者の自殺も発生していた. 高齢化の進むハンセン病療養施設においては, うつ病を中心とした気分障害の診断, 治療はますます重要になると考えられる. 精神科医療の確立に加えて, 心理学的ケア・アプローチの導入など, メンタル面での充実が, ハンセン病回復者の今後の生活の質の向上に重要であると考える.
ISSN:1342-3681