ヒトヘパリン静注後血漿中の肝性トリゲリセリドリパーゼの抗原活性の長期保存における安定性の検討

肝性トリグリセリドリパーゼ(hepatic triglyceride lipase:HTGL, EC3. 1. 1. 3)は, 分子量65kDaの糖蛋白で, モノマーで活性型である. 1)HTGLは, 肝実質細胞で合成された後, 細胞表面に転送され, ヘパラン硫酸様糖鎖を介して細胞表面に結合し, 生理作用を発揮している. 2)HTGLは, 食餌由来の大型リポ蛋白であるカイロミクロンや肝臓由来の超低比重リポ蛋白(very low density lipoprotein:VLDL)がリポ蛋白リパーゼ(lipoprotein lipase:LPL, EC3. 1. 1. 34)により小型化されたカイ...

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Published inYAKUGAKU ZASSHI Vol. 123; no. 7; pp. 587 - 591
Main Authors 西村誠a, 岩永武敏a, 大軽靖彦a, 高木敦子b, 池田康行c
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本薬学会 2003
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Summary:肝性トリグリセリドリパーゼ(hepatic triglyceride lipase:HTGL, EC3. 1. 1. 3)は, 分子量65kDaの糖蛋白で, モノマーで活性型である. 1)HTGLは, 肝実質細胞で合成された後, 細胞表面に転送され, ヘパラン硫酸様糖鎖を介して細胞表面に結合し, 生理作用を発揮している. 2)HTGLは, 食餌由来の大型リポ蛋白であるカイロミクロンや肝臓由来の超低比重リポ蛋白(very low density lipoprotein:VLDL)がリポ蛋白リパーゼ(lipoprotein lipase:LPL, EC3. 1. 1. 34)により小型化されたカイロミクロンレムナントや中間比重リポ蛋白(intermediate density lipoprotein:IDL)及び高比重リポ蛋白(high density lipoprotein:HDL)に含まれるトリグリセリドやリン脂質の水解に関与し, 2)これらのリポ蛋白の異化代謝において重要な役割を担っている. HTGLは, 通常, 血中にごく微量の酵素活性のない不活性型酵素として認められる. 一方, ヘパリンを静脈内投与することにより細胞表面にヘパラン硫酸様糖鎖を介して係留していた活性型HTGLを流血中に遊離することができる. このヘパリン静注後血漿(postheparin plasma:PHP)は, 活性型HTGLを含むので, 臨床検体として広く使用されている. HTGL酵素異常は, PHP中に含まれる活性型HTGLの酵素活性を測定することで判定できる. 13)しかし, 一般に用いられているHTGLの活性測定は, 基質である長鎖トリグリセリドの乳化及びPHP中に共存するLPLとの分別定量が必須であり, 一連の酵素活性測定方法が煩雑で長時間を要するため多検体処理には難点がある. 最近, 我々はヒトHTGL分子の異なる2つのエピトープを認識するモノクローナル抗体を用いてサンドイッチELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)を確立し, HTGLの蛋白量(mass量)の測定を可能にした. 34)このHTGL ELISAの確立のために一次標準としてヒトPHPより精製したHTGL蛋白を用いたが, ELISA試薬として広く普及させるため標準物質として利用できるHTGL蛋白標品の確保が必要となった. 利便性を重視し, HTGLを含むヒトPHPの凍結乾燥化を試み, その長期保存時におけるHTGL蛋白の抗原活性の安定性について検討した.
ISSN:0031-6903
1347-5231