2.小児肺炎入院例における「小児呼吸器感染症診療ガイドライン2004」の臨床上の有用性・問題点の評価
【対象と方法】千葉県内の5病院で2005年1月から5月までに入院加療を受けた小児市中肺炎症例110例について, 本ガイドラインに示されている重症度判定基準, 入院の目安, 抗菌薬療法の選択を中心に, 後方視的に検討した. 抗菌薬の治療効果判定は日本化学療法学会の示す判定基準を用いた. 【結果】平均年齢は2.95歳で38例(34.5%)が何らかの呼吸器系の基礎疾患を有していた. 重症度判定基準のうち, 臨床症状, 胸部X線所見は大半が「軽症」であったが, CRPは61%が「中等症」, 好中球数は43%が「重症」にあてはまった. その結果, すべてが軽症の基準であれば軽症, 重症の項目が一つでもあ...
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Published in | 日本小児呼吸器疾患学会雑誌 Vol. 17; no. 1; p. 78 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本小児呼吸器疾患学会
2006
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Summary: | 【対象と方法】千葉県内の5病院で2005年1月から5月までに入院加療を受けた小児市中肺炎症例110例について, 本ガイドラインに示されている重症度判定基準, 入院の目安, 抗菌薬療法の選択を中心に, 後方視的に検討した. 抗菌薬の治療効果判定は日本化学療法学会の示す判定基準を用いた. 【結果】平均年齢は2.95歳で38例(34.5%)が何らかの呼吸器系の基礎疾患を有していた. 重症度判定基準のうち, 臨床症状, 胸部X線所見は大半が「軽症」であったが, CRPは61%が「中等症」, 好中球数は43%が「重症」にあてはまった. その結果, すべてが軽症の基準であれば軽症, 重症の項目が一つでもあった場合, 重症と判定する本ガイドラインの重症度判定基準によると, 全体の判定では「軽症」は1例のみであった. 入院理由は, 「重症度分類で中等症以上」72例, 「経口抗菌薬治療不応」42例であった. 起炎菌検索として喀痰培養が81例(74%)で実施され, 病原細菌検出は67例(83%)で認められ, 内訳はHaemophilus influenzae 49例, Streptococcus pneumoniae 28例, Moraxella catarrhalis 12例であった. インフルエンザ菌では60%がABPCのMICが2以上あった. 肺炎球菌では75%がPcGのMIC0.12以上であったが, 2以上の株は認めなかった. 入院後の初期治療はABPC±SBTが80例(72%)で選択され, 抗菌薬治療効果は97例(89%)が「有効」以上であった. 【考察】本ガイドラインの市中肺炎重症度判定では, 臨床症状と血液検査データに解離が見られ, 実際の臨床現場で有効に利用されるためには課題が残ると考えられた. 市中肺炎入院例の治療については, 本ガイドラインに沿った治療を行い, 約90%が治療に成功していた. |
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ISSN: | 0918-3876 |