7 神経疾患におけるリハビリテーションの役割 - 機能回復, QOL改善を目指して

リハビリテーション (リハビリ) は「機能の回復」を目指すのはもちろんですが, 機能回復が望めない疾患に対しても「障害を克服する」という観点から, その人なりの身体的, 精神的なQOLを改善することを目的に実施されます. 「機能回復」を目的としたリハビリを実施する神経疾患として代表的なものに脳卒中があり, 我が国の死因の第4位とはなりましたが, 老年期にきたす身体障害で大きな位置を占める脳卒中においてリハビリは大きな役割を担ってきました. 以前は損傷を受けた中枢神経系は再生することはないと信じられてきましたが, 障害されたニューロンが再生することが報告された1998年以降, 神経科学的な知見を...

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Published in神経治療学 Vol. 36; no. 3; p. 208
Main Author 森田光哉
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本神経治療学会 25.05.2019
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Summary:リハビリテーション (リハビリ) は「機能の回復」を目指すのはもちろんですが, 機能回復が望めない疾患に対しても「障害を克服する」という観点から, その人なりの身体的, 精神的なQOLを改善することを目的に実施されます. 「機能回復」を目的としたリハビリを実施する神経疾患として代表的なものに脳卒中があり, 我が国の死因の第4位とはなりましたが, 老年期にきたす身体障害で大きな位置を占める脳卒中においてリハビリは大きな役割を担ってきました. 以前は損傷を受けた中枢神経系は再生することはないと信じられてきましたが, 障害されたニューロンが再生することが報告された1998年以降, 神経科学的な知見をもとに, 脳の可塑性に対して積極的に働きかけ, 神経ネットワークの再構築を促進させるような「ニューロリハビリテーション」という概念が発展し, 脳卒中に対するリハビリも, 経頭蓋磁気刺激やロボットスーツを利用した新たな技法が開発されてきました. 一方, 原因が不明で有効な治療もなく, 慢性的な経過をたどり後遺症を残すことも多い神経難病に対しては, 主にQOL改善を目的としたリハビリが実施されております. Parkinson病に対する運動療法を中心としたリハビリは「Parkinson病診療ガイドライン2018」でも有効とされておりますし, また筋萎縮性側索硬化症のコミュニケーションツールの導入にもリハビリは一役かっています. 近年ますます増えている認知症などについても, 非薬物療法としてのリハビリの効果が期待されるとともに, 軽度認知機能障害でのリハビリが認知機能の維持に有効であるとの報告もあり, リハビリが予防医学的な面からも見直されている現状があります. 以上の点を踏まえて, 神経疾患におけるリハビリテーションの役割について, 現状および今後の方向性についてまとめてみたいと思います.
ISSN:0916-8443