菌肉退縮にともなう発音及び審美障害に対する対応~ステントを用いた症例
【目的】歯周治療により生じる歯肉の収縮および退縮は, 歯根露出あるいは歯間空隙の拡大を招き, 知覚過敏や食片圧入の原因となることがある. 特に前歯部の歯間乳頭が退縮した場合は, これらの症状よりも審美的あるいは発音などの機能的な障害が患者にとってより大きい精神的苦痛となることがある. 外科的あるいは補綴的な対処法が困難あるいは非適応等の理由で, これらの障害に対し対応できない場合, 患者および医療側洪に満足のいくメインテナンス治療へと移行できない可能性がある. 今回, 歯周治療により生じた上顎前歯部の歯肉退縮に起因する審美, 発音障害に対して, レジン製の疑似歯肉(歯肉ステント)により対応する...
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Published in | 日本歯周病学会会誌 Vol. 45; no. suppl-1; p. 196 |
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Main Authors | , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯周病学会
2003
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Summary: | 【目的】歯周治療により生じる歯肉の収縮および退縮は, 歯根露出あるいは歯間空隙の拡大を招き, 知覚過敏や食片圧入の原因となることがある. 特に前歯部の歯間乳頭が退縮した場合は, これらの症状よりも審美的あるいは発音などの機能的な障害が患者にとってより大きい精神的苦痛となることがある. 外科的あるいは補綴的な対処法が困難あるいは非適応等の理由で, これらの障害に対し対応できない場合, 患者および医療側洪に満足のいくメインテナンス治療へと移行できない可能性がある. 今回, 歯周治療により生じた上顎前歯部の歯肉退縮に起因する審美, 発音障害に対して, レジン製の疑似歯肉(歯肉ステント)により対応することで, 患者のコンプライアンスを高めることに成功した症例について報告する. 【症例および治療】症例1:34歳, 女性(初診:1997年8月15日)主訴:7部の歯肉腫脹および疼痛, ブラッシング時出血 経過:早期発症型歯周炎と診断したのち歯周基本治療を行った. メインテナンス移行直前に321 123部の発音, 審美障害に関する訴えがあったため歯肉ステントの適用を試みた. 症例2:50歳, 女性(初診:1999年4月6日)主訴:全顎的な歯間部歯肉の腫脹, 321の拡大した歯間空隙の発音障害 経過:成人性歯肉炎と診断したのち歯周基本治療を行ったが, 来院時の主訴である発音障害が, 治療に伴う更なる歯肉退縮により, 審美障害と共に増したとの訴えがあり, 同部への歯肉ステントの適用を試みた. 症例3:42歳, 女性(初診:1999年10月4日)主訴:歯の動揺ならびにブラッシング時出血 経過:成人性歯肉炎と診断したのち歯周基本治療を行った. 治療に伴い21 123部歯間乳頭の著しい退縮が認められ, それに起因する審美障害を訴えたため, 同部への歯肉ステントの適用を試みた. 歯肉ステントの製作:まず, 製作対象となる部位の歯間空隙の口蓋側をユーティリティーワックスにてブロックアウトした後, 唇側面を寒天, アルジネートにて印象採得した. 調製した作業模型上で外形線を設定し, 補強の目的でフレンジ部に埋入するワイヤー(コバルトクロム合金製, 0.7mmφ)を仮着後, 即時重合レジン(UNIFASTII, LIVEPINK:GC)を筆積みにて築盛した. 硬化後, 形態修正ならびに研磨を行い, チェアサイドにて歯間空隙部の形態を微調整し, 同装置の使用法ならびに装着部位のプラークコントロールに関する指導を行ったのち, 患者に使用させた. その後, 定期的なメインテナンス時に, 装着感を患者に問診するとともに装置をチェックし, 必要に応じて形態修正, 再研磨を行い現在に至っている. 【結果および考察】歯周治療上やむを得ず歯肉退縮を引き起こし, 結果として発音, 審美障害が生じても, 外科的, 補綴的対処法が不可能な場合には患者の精神的苦痛を取り除けないまま治療を継続せざるを得ない場合がある. 今回, 患者の心理的な面を担当の歯科衛生士が配慮できたこと, また歯科衛生士による歯肉ステントに関する情報提供ならびに歯科医師との連携および治療まで終始円滑に遂行できたことにより, 患者の精神的苦痛に対してほぼ十分な対処ができたものと思われる. 本症例を通じ, 担当歯科衛生士による患者への細かな配慮, および担当歯科医師との連繋したメインテナンス治療が, 患者との信頼関係をより強くし, コンプライアンスを高めるための一要因として重要であることを再認識した. |
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ISSN: | 0385-0110 |