狭窄した歯槽堤に行った移植歯の3D-CTによる臨床評価

目的 近年, 歯周病治療における再生医療の研究の進歩はめざましい. 以前より施行されてきた歯の自家移植は, 移植床への歯根膜組織細胞の移植と考えると再生医療の概念に相当すると考えられる. 当科では, 唇頬側方向に歯槽堤の狭窄により移植床の形成に苦慮した2症例に対し, splittingを併用して歯の移植を行なった. 術後の臨床経過は大変良好であり, 術後2年以上経過して唇頬側の歯槽骨の再生を検索するために3次元デンタルCT(3D-CT)撮影を行なったところ, 2症例ともにsplittingした唇頬側の固有歯槽骨の再生が確認できたので3D-CT画像を供覧し報告する. 対象 症例1 初診時年齢12...

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Published in日本歯周病学会会誌 Vol. 45; no. suppl-1; p. 168
Main Authors 小飼英紀, 穂坂康朗, 赤松真也子, 中川種昭, 加藤熈
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本歯周病学会 2003
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ISSN0385-0110

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Summary:目的 近年, 歯周病治療における再生医療の研究の進歩はめざましい. 以前より施行されてきた歯の自家移植は, 移植床への歯根膜組織細胞の移植と考えると再生医療の概念に相当すると考えられる. 当科では, 唇頬側方向に歯槽堤の狭窄により移植床の形成に苦慮した2症例に対し, splittingを併用して歯の移植を行なった. 術後の臨床経過は大変良好であり, 術後2年以上経過して唇頬側の歯槽骨の再生を検索するために3次元デンタルCT(3D-CT)撮影を行なったところ, 2症例ともにsplittingした唇頬側の固有歯槽骨の再生が確認できたので3D-CT画像を供覧し報告する. 対象 症例1 初診時年齢12歳9ヶ月男子外傷により来科1が欠損した. 欠損部は唇舌側に狭窄し移植は困難であったが歯槽骨を唇側にsplittingして移植床を形成し便宜抜去歯の4を移植し矯正移動した. 術後経過良好であった同部の3D-CTを移植後6年経過時に撮影機会を得た. 症例2 初診時年齢22歳5ヶ月女性歯列矯正終了後6部への8の移植を目的に来科. 頬舌側に高度な狭窄を認め移植は困難であったが患者の同意が得られたため, 歯槽骨の頬側歯槽骨を分割し移植窩を形成した後, 移植歯と同時に分割した歯槽骨を移植した. 経過良好で移植後2年経過時に3D-CTの撮影を行った. 結果 唇頬側方向および水平断の3D-CT画像より2症例ともにsplittingした唇頬舌側の歯槽骨は歯頸部付近まで確認でき, 歯根膜空隙も歯根全周で確認できた. 考察とまとめ 従来, 歯の移植は移植床形成時に移植歯周囲に歯槽骨が十分確保できることが条件とされてきた. 当科では, 頬舌側に狭窄した条件の悪い歯槽堤に対してsplittingを行なって移植窩を形成し歯の移植を行なっている. 今回, 3D-CT撮影により唇頬舌側の歯槽骨の再生が確認できたことから, splittingを併用した歯の移植術は, 狭窄した歯槽堤に対して欠損した歯槽骨を再生させる有効な方法であることが示唆された. また症例1のように, 成長期の学童における欠損部治療として, 従来から歯の移植は有効な手段とされてきた. 今回の歯槽堤の狭窄と条件は悪かったがsplittingを併用して歯を移植した症例で, 隣接歯同様歯槽骨および歯肉が垂直的に成長したことが3D-CTにより検証できたことから, 若年者に対する歯の移植法の有用性を再確認した.
ISSN:0385-0110