口内法X線撮影におけるOne Shot Dual Energy Subtraction法の確立-歯槽骨骨密度測定のための基礎的検討
[目的]Dual Energy Subtraction法は, 軟組織と硬組織のX線エネルギーの吸収程度の違いを利用し, 余分な軟組織情報を除去することにより, より精度の高い骨塩定量を行うものである. 現在, この原理はDEXA法(Dual Energy X-ray Absorptiometry)として, 腰椎や前腕骨等の骨密度の計測に広く用いられている. そこで, 我々は口内法X線撮影にDual Energy Subtraction法を利用し, 歯槽骨骨密度の定量的測定法を確立することを最終目的として, その臨床応用の可能性にっいて基礎的検討を行ったので報告する. [方法]今回の検討は, 従...
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Published in | 日本歯周病学会会誌 Vol. 45; no. suppl-1; p. 153 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本歯周病学会
2003
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0385-0110 |
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Summary: | [目的]Dual Energy Subtraction法は, 軟組織と硬組織のX線エネルギーの吸収程度の違いを利用し, 余分な軟組織情報を除去することにより, より精度の高い骨塩定量を行うものである. 現在, この原理はDEXA法(Dual Energy X-ray Absorptiometry)として, 腰椎や前腕骨等の骨密度の計測に広く用いられている. そこで, 我々は口内法X線撮影にDual Energy Subtraction法を利用し, 歯槽骨骨密度の定量的測定法を確立することを最終目的として, その臨床応用の可能性にっいて基礎的検討を行ったので報告する. [方法]今回の検討は, 従来の口内法X線撮影と被曝量に差が生じないよう, 金属フィルタを用いたOne Shot法(1回撮影法)で行った. また, エネルギー分離を行うための金属フィルタは, 口内法フィルムの中に挿入するため, 臨床的に許容できる厚みを考慮しCu200μmとした. 撮影後, 金属フィルタ前後の口内法フィルムは, スキャナーにより300dpiでデジタル化した. 歯槽骨骨密度の定量画像であるアルミ当量画像は, 汎用性の高い画像処理ソフトNIH Image(Ver1. 62, National Institute of Health, USA)を用い, 自動算出のためのマクロプログラムを独自に作成し, パーソナルコンピュータ上での表示を可能にした. 検討項目は1)最適な撮影条件の決定, 2)本法におけるアルミ等量画像の精度, 3)臨床応用についてである. 撮影条件の決定に関しては, 軟組織等価のゴム板(板状ファントム:京都科学標本株式会社)とアルミステップ1mm16段階を, 電圧65kV~80kV, 線量1mAs~5mAsまで変化させ撮影し, 写真コントラストが最も良好なものを選出した. アルミ等量画像の精度については, 板状ファントムを付与したアルミステップを最適条件で撮影し, 本プログラムにより算出されたアルミ等量画像とアルミステップのみの画像を比較した. 臨床応用については, 同意が得られた患者1名に対し本法を施行し, 実際の口内法X線撮影で適用可能かどうか検討した. [結果]1)今回検討した中での最適な撮影条件は70kV, 10mA, 0. 3sであった. 2)本法により, 軟組織情報は除去され, アルミ等量画像とアルミステップのみの画像は良好な相関を示した. 3)実際の口内法撮影においても, アルミ等量画像の算出が可能であり, フィルム内へ金属フィルタを挿入したことによる撮影時の不快感も認められなかった. [結論]歯槽骨骨密度は歯周病と骨粗鬆症との関連や, 歯周炎による骨吸収の程度を評価するための重要な指標の一つと考えられる. 現在, 歯槽骨骨密度を定量的に評価する方法は少なく, 本法が新しい定量分析法として臨床応用できる可能性が示唆された. 会員外協力者:有地榮一郎(愛知学院大学歯学部噛科放射線学講座) |
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ISSN: | 0385-0110 |