8 台湾系ツツガムシ病をみた宮古列島, そこで確認したデリーツツガムシの浸淫と消長

南西諸島の西部で緯度的に台湾と同位の宮古列島において, 2008年6月にツツガムシ病が確認された. 同諸島で初の原発例であったため, その感染環調査を2008年秋から冬そして6月に計4回にわたり宮古島本島内の諸所で行ったが, ツツガムシ個体はむろん鼠から病原Orientia遺伝子すら検出できずに居た. ところが, 2010年6月に2例目が見出されたため, 患者の主たる行動地域として同島最北部の池間島(近年, 長大橋で連結)に焦点を当てて7月に調査したところ, 家鼠系の繁殖に伴う夥しいデリーツツガムシの浸淫を見て, その鼠類の脾臓から患者感染型と同じ台湾系菌型を含む遺伝的多形性のOrientia...

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Published inMedical Entomology and Zoology Vol. 62; no. 2; p. 151
Main Authors 高田伸弘, 平良勝也, 藤田博己, 山本正悟, 安藤秀二, 角坂照貴, 高橋守, 川端寛樹, 北野智一, 岡野祥, 御供田睦代, 高野愛, 矢野泰弘, 及川陽三郎, 本田俊郎, 岩崎博道, 平良セツ子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本衛生動物学会 2011
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ISSN0424-7086

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Summary:南西諸島の西部で緯度的に台湾と同位の宮古列島において, 2008年6月にツツガムシ病が確認された. 同諸島で初の原発例であったため, その感染環調査を2008年秋から冬そして6月に計4回にわたり宮古島本島内の諸所で行ったが, ツツガムシ個体はむろん鼠から病原Orientia遺伝子すら検出できずに居た. ところが, 2010年6月に2例目が見出されたため, 患者の主たる行動地域として同島最北部の池間島(近年, 長大橋で連結)に焦点を当てて7月に調査したところ, 家鼠系の繁殖に伴う夥しいデリーツツガムシの浸淫を見て, その鼠類の脾臓から患者感染型と同じ台湾系菌型を含む遺伝的多形性のOrientia遺伝子をPCRで検出, さらにマウス継代にて生きた菌株分離にも成功した. なお, 皮疹を起因するナンヨウツツガムシも見出された. 現在, ムシ自体からのPCRは陰性で菌分離も試行中であるが, デリーツツガムシの季節的発生消長などを含めた調査は8月以降も継続しており, 今回はこれら経緯の概況を紹介した上で, 本地域における本病の地理病理学的な意味を考察する.
ISSN:0424-7086