糖鎖解析におけるキャピラリー電気泳動が果たす役割

「はじめに」ポストゲノム時代における遺伝子・タンパク質などの生体高分子の構造解析技術は「感度」, 「精度」, 「スループット」のいずれの点においても目覚しく進歩している. 特に, 質量分析法による技術的革新はプロテオミクス研究進展の立役者となった. 一方, 糖鎖解析は遺伝子やタンパク質の解析に比べ圧倒的に難しく, 糖鎖特有の問題を克服するための独自の方法論が必要である. 糖鎖解析が難しい理由は, 糖鎖が核酸やタンパク質を凌く構造多様性を有することと, 核酸のように増幅ができないため, 微量の試料を用いて解析しなければならない点である. すなわち, 糖鎖解析では糖鎖の微細不均一性を区別しうる高い...

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Published in生物物理化学 Vol. 52; no. suppl; pp. 111 - 116
Main Authors 木下充弘, 掛樋一晃
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本電気泳動学会 2008
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Summary:「はじめに」ポストゲノム時代における遺伝子・タンパク質などの生体高分子の構造解析技術は「感度」, 「精度」, 「スループット」のいずれの点においても目覚しく進歩している. 特に, 質量分析法による技術的革新はプロテオミクス研究進展の立役者となった. 一方, 糖鎖解析は遺伝子やタンパク質の解析に比べ圧倒的に難しく, 糖鎖特有の問題を克服するための独自の方法論が必要である. 糖鎖解析が難しい理由は, 糖鎖が核酸やタンパク質を凌く構造多様性を有することと, 核酸のように増幅ができないため, 微量の試料を用いて解析しなければならない点である. すなわち, 糖鎖解析では糖鎖の微細不均一性を区別しうる高い分解能と微量の糖鎖を検出でぎる高い感度を兼ね備えた分析法が必要となる. キャピラリー電気泳動(CE)は高分解分離能により微細不均一性を持つ糖鎖混合物の分離分析に最も適した分析手法の一つであり, He-CdレマザーやArレーザー励起蛍光検出法を組み合わせることで蛍光標識化された微量糖鎖(10-15~10-18mol)の高感度分析を達成できる.
ISSN:0031-9082