6.日常検査での検査過誤防止の為のシステム構築 -自動分析装置での異常反応チェック法の設定を中心に
【はじめに】当検査部では, 検査過誤防止のため分析装置でプロゾーン, 異常値チェックを行い, 検査システムでは, ゾーン法や項目間チェックを行っている. しかしながら, 第1試薬添加後に濁りを生じるなどの反応過程異常を検出する方法が確立していないため, チェック機構をすり抜けて誤ったデータを報告してしまう可能性がある. 測定後に反応過程を観察することによって異常反応かどうかを見分けることは容易ではないためリアルタイムに検出する方法が必要である. 本発表では, BM1650(日本電子)での異常反応の検出条件の設定とその有効性評価および, 項目間チェックの設定と, チェック後どのようにデータ返却を...
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Published in | 生物物理化学 Vol. 50; no. 3; p. 103 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本電気泳動学会
2006
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0031-9082 |
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Summary: | 【はじめに】当検査部では, 検査過誤防止のため分析装置でプロゾーン, 異常値チェックを行い, 検査システムでは, ゾーン法や項目間チェックを行っている. しかしながら, 第1試薬添加後に濁りを生じるなどの反応過程異常を検出する方法が確立していないため, チェック機構をすり抜けて誤ったデータを報告してしまう可能性がある. 測定後に反応過程を観察することによって異常反応かどうかを見分けることは容易ではないためリアルタイムに検出する方法が必要である. 本発表では, BM1650(日本電子)での異常反応の検出条件の設定とその有効性評価および, 項目間チェックの設定と, チェック後どのようにデータ返却を行っているかを紹介する. 【方法】1, 自動分析装置BM1650での異常反応チェック法の設定日本電子BMシリーズの汎用型生化学自動分析装置では, 主条件設定の他に2つのサブ条件を設定することが出来る. 異常反応検出条件の設定は, 分析項目条件設定のサブ条件に測光ポイントと主測光波長を変更した条件を組み込んだ. 主条件と同時にサブ条件に設定した条件で測光することにより検体と試薬は測定1回分で3つの異なる吸光度情報を得ることが可能である. 健常者検体を異常反応測定条件で測定し, 1分間あたりの吸光度変化の平均値を求め, 正常反応と異常反応の閾値とした. この閾値を判定補助項目に設定してアラーム音とフラグによって検出できるようにした. 異常反応陽性コントロールで異常反応を検出可能であることを確認後, M-蛋白血症の33検体を使ってチェック機構を検証した. 2, 項目間チェックの設定 1)TP-ALB-(IgG+IgA+IgM)/1000 2)TC-HDL-C-LDL-C-(TG/5) 3)CK-3×CK-MB 1, 2)それぞれについて当検査部に同時依頼のあった患者検体データを抽出し, 計算値の上下約1~2. 5%値の設定を行った. 3)はCK-MB活性は生体内では総CK活性の25%を超えないことから, 上記計算で1未満となる検体のチェックを行う. 【結果】1, 自動分析装置BM1650での異常反応チェック法 健常者血清から正常反応と異常反応の閾値を設定した. M-蛋白血症の33検体のうち15検体で閾値以上の吸光度変化によってアラーム音とフラグが示された. 15検体の反応過程モニタを観察し, 確認試験によって5検体で異常値が確認された. 異常反応を示した項目は, 希釈測定を行うことにより異常反応が回避された為データ返却を行った. このうち一症例の解析の結果, IgM-λ型M蛋白と第1試薬中の界面活性剤との異常反応であった. ルーチン検査中にこのアラームが検出された場合, リアルタイムに反応過程のチェックを行っている. 乳びや溶血により吸光度変化が生じていることが多い. 2, 項目間チェックの設定1)TP-ALB-(IgG+IgA+IgM)/1000 3757名のデータの98%は0.7~1.8の範囲内であった. それ以下あるいは以上をチェック対象とした. このチェックで検出された場合, 反応過程のチェック, CRPやフィブリノーゲン等の炎症マーカーの確認や, 脂質データの確認を行っている. M蛋白血症が疑われるようなデータの場合に検出されることが多い. チェック後の確認でIgD型M蛋白であった1例もあった. 2)TC-HDL-C-LDL-C-(TG/5) 8155名のデータの95%は-26~23の範囲内であった. それ以下あるいは以上をチェック対象とした. このチェックで検出された場合, TG400mg/dl以下の時は, 「HDL-C, LDL-C, TG/5の総和がTC値と乖離しています. リポ蛋白染色で精査可能です. 」のコメントを付けてデータ返却を行っている. その検体の一部にDEMSO添加後凍結保存し, リポ蛋白染色で精査を行う事もある. 3)CK-3×CK-MBこのチェックで検出された場合, 「総CKに対しCK-MBが異常高値となっています. CK-BBやミトコンドリアCK, マクロCK等の存在が考えられます. CK-MBは参考値として下さい. 」のコメントを付けてデータ返却を行っている. 【まとめ】検査結果を臨床に返却する上で, 迅速性と正確性は極めて重要な事と考えられる. 全ての検査データを確認することは検査件数や人員, 迅速性の面から考えるとあまり効率的で無いと思われる. その為にリアルタイムに効率よく異常データを検出するシステム構築は重要である. 当検査部で行っている自動分析機での異常反応検出法は, システム上で行っている様々なデータチェック法を組み合わせることで, 検査データチェックの網の目を小さくし, 検査過誤防止に役立っと考えられる. |
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ISSN: | 0031-9082 |