23.各種疾患における血清蛋白分画成績のキャピラリー電気泳動法とセルロースアセテート膜電気泳動法との比較
【目的】キャピラリー電気泳動法(Beckman Paragon CZE 2000)はセルロースアセテート膜電気泳動法(CAE)に比ベアルブミン分画で10%低値, α1-グロブリン分画で93%高値, β-グロブリン分画で15%高値にある. われわれは健常者からCZEの基準値を設定しているが, 今回, 同基準値を各種疾患の評価に用いた時のCAE法との成績の一致率について検討した. 【方法】対象は妊婦(19名), ネフローゼ症候群(12名), 急性ないし慢性炎症(8名), 肝硬変(7名), 単クローン性γ-グロブリン血症(38名), 多クローン性γ-グロブリン血症(10名), ビスアルブミン血症(4...
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Published in | 生物物理化学 Vol. 48; no. suppl; p. 40 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本電気泳動学会
2004
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ISSN | 0031-9082 |
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Summary: | 【目的】キャピラリー電気泳動法(Beckman Paragon CZE 2000)はセルロースアセテート膜電気泳動法(CAE)に比ベアルブミン分画で10%低値, α1-グロブリン分画で93%高値, β-グロブリン分画で15%高値にある. われわれは健常者からCZEの基準値を設定しているが, 今回, 同基準値を各種疾患の評価に用いた時のCAE法との成績の一致率について検討した. 【方法】対象は妊婦(19名), ネフローゼ症候群(12名), 急性ないし慢性炎症(8名), 肝硬変(7名), 単クローン性γ-グロブリン血症(38名), 多クローン性γ-グロブリン血症(10名), ビスアルブミン血症(4名)で血清蛋白分画をParagon CZE2000ならびにオリンパスAES320で測定した. 得られたCZE法とCAE法の蛋白分画(%とg/リットル)を, それぞれの方法での基準値と比較して成績(基準範囲内もしくは基準値より増減)とした. 成績の一致率は100×[(対象数)-(成績の一致数)]/(対象数)から計算した. CAEの基準値は, アルブミン58.9-70.6%(45.5-57.2g/リットル), α1-グロブリン1.9-3.1%(1.4-2.4g/リットル), α2-グロブリン6.3-10.6%(3.9-6.8g/リットル), β-グロブリン7.0-11.5%(5.0-8.0g/リットル), γ-グロブリン10.7-21.2%(7.5-15.4g/リットル), CZEの基準値は, アルブミン52.7-67.1%(39.0-52.0g/リットル), α1-グロブリン3.6-6.8%(2.7-5.2g/リットル), α2-グロブリン4.8-9.9%(3.6-6.9g/リットル), β-グロブリン8.2-13.5%(5.9-10.6g/リットル), γ-グロブリン10.7-22.5%(7.3-18.1g/リットル)である. 【成績】(1)妊婦:アルブミンの減少とα1, α2, β-グロブリン分画の増加は両法で認められた. アルブミンの一致率は68%(分画%), 89%(濃度)であるが, アルブミン, α1-, α2-, β-グロブリン分画の乖離例が他の症例に比べ, 分回%, 濃度とも妊婦血清で多く認められた. (2)ネフローゼ症候群:アルブミンの減少とα1-, α2-グロブリン分画の増加は両法で認められた. 各分画で一致率は90%以上であった(分画%と濃度). (3)炎症:アルブミンの減少とα1-, α2-, γ-グロブリン分画の増加が両法で認められた. 各分画の一致率は100%にあった. (4)肝硬変:アルブミンの減少とγ-グロブリン分画の増加が両法で認められた(一致率は100%). 両法とも全例でβ-γブリッジを観察した. β-グロブリン分画の一致率は分画%と濃度とも43%であった(乖離が4例). (5)多クローン性γ-グロブリン血症:アルブミンの減少とγ-グロブリン分画の増加が両法で認められた(分画%と濃度:一致率は100%). β-グロブリン分画で乖離例が2例認められた(一致率は80%). (6)単クローン性γ-グロブリン血症:アルブミンの減少とγ-グロブリン分画の増加が両法で認められた(分画%と濃度). M-蛋白はβ-(CZEで4例)ならびにγ-グロブリン分画(CZEで34例)に検出され両法とも100%の検出率にあった. β-グロブリン分画とγ-グロブリン分画で乖雌例が3例認められた. (7)ビスアルブミン血症:CZE法でビスアルブミン血症(ダブルアルブミン)が検出された4例の内3例がCAE法で検出できなかった. 【考察】妊婦を除き, アルブミンの低下とα1, α2-グロブリンの増加の一致率は各症例とも100%(分画%), 79-100%(濃度)にあった. β-グロブリンの分画%の一致率は, 肝硬変で43%, 多クローン性γ-グロブリン血症で80%, 単クローン性γ-グロブリン血症で89%と低い一致率にあった. β-グロブリン分画が不一致にあった単クローン性γ-グロブリン血症の3例はγ-グロブリン分画でも不一致の成績となった. CZEでβ-グロブリン分画に検出されたM-蛋白が, CAEではβとγの間(IgG), fastγ(IgM), slowγ(IgM)に泳動されたことが原因と考えられた. その他の症例(肝硬変で4例, 多クローン性γ-グロブリン血症で2例)でもβ-グロブリン分画の不一致は, β-グロブリンがγ-グロブリン分画に測り込まれていることに起因した(ティリーイング). これらの成績よりCZEはCAEと同等の成績が得られるが, CZEが分離にすぐれていることが示された. |
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ISSN: | 0031-9082 |